小中陽太郎/作家/名古屋のパリ祭「みなとフォーラム」/06/07/17
小中陽太郎(作家)
6月20日小泉首相は、自衛隊のイラク撤退を発表した。遅すぎる決定であり、安全に撤退できる保証もない。それ以上にイラクの地に戦火がやむ気配もなく、それはレバノンにまで広がろうとしている。
▼1954年北ベトナム軍の包囲にあって、フランス軍のディエンビエンフー要塞は陥落した。その日、「墓につばをかけろ」で知られるジャズ作曲者ボリス・ヴィアンは、シャンソン「脱走兵」を発表、ただちに放送禁止になった。
▼「大統領閣下、わたしはこれから脱走します」と宣言するこの曲を、今度は日本のシャンソン歌手・碧川るりこがミュージカル「ラメール」(原作・小中陽太郎)で熱唱した。何よりうれしいのは、主催のみなとフォーラムは、愛労連に集う名古屋港港湾関係労働組合(田中洋行議長)で、労働者の必死の活動で850人、広い会場を埋め尽くしたことだ。(7月14日名古屋の全港湾会館))。 「昔の港の写真展」には、労働者の記録写真や杉本健吉画伯の絵日記が公開され、和太鼓「きずな」の熱演に続いて、俳優天野鎮雄と小中のトーク「平和deナイト」で、憲法9条をまもる決意が語られ会場から拍手がわきおこった。
折りしも東京では、「私たちの巴里祭、シャンソンとワインと『九条』のつどい」が熱気のなかに進んでいると知らせがはいった。
戦争は地球から絶える事はない。だが歌声もまた消えることはない。名古屋では最終幕、米兵のベトナム脱走兵の実写フィルムが終わるやまるでそれが見えたように、ベトナム平和委員会から、連帯の挨拶が届いた。6時。エンディングで碧川によって朗読されたベトナム平和委員会のメッセージ。
〈日本の平和活動家であり、ベトナムの親しい友人でもあるあなたに、ベトナム・ハノイから熱烈なごあいさつを送ります。
あなたが、港湾の労働組合の支援のもとに行われる「港フォーラム」で、働く人々にお話をされること、また、深いヒューマニティーと気高い平和の精神にあふれたあなたの著作「ラメール・母」をもとにしたミュージカルが演じられることを知って、とても感銘をうけています。
私たちはあなたのご活動の数々、ベトナムに対する友好的で平和的な暖かい心遣いを忘れたことはありません。日本とベトナム、そして世界の平和のための、また日本とベトナムの友好のための鼓動は脈々と打ち続けているのです。日本の港湾労働者のみなさんの平和へのご支援を感謝したいと思います。
またこの機会に、小中さんを通じて、ミュージカルを鑑賞されているみなさんにも熱いごあいさつを送ります。小中さんがまた近い将来、ベトナムに来ていただけることを願っています。
平和と愛をもって〉
ベトナム平和委員会事務局長グエン・バン・ヒュン。
これ以上のあたたかい平和への連帯と友情があろうか。この連帯ある限り、平和運動も耐えることはないと胸にこみ上げるものを押しとどめることはできなかった。