小中陽太郎/作家/肉声の通い合う草ノ根「九条の会」の運動/06/09/15


肉声の通い合う草ノ根「九条の会」の運動

小中陽太郎(作家)

今年の夏のテレビを一言で評すれば「ハンカチ王子」に「ネクタイ被告」。いかに今のテレビが映像重視というか、見た目で物事を決めているかを示している。そういえば「ライオン首相」の手法も印象だけで、大事な議論やきめの細かい思考は抜け落ちてゆくという寸法だ。

  そんな夏、肉声の通い合ういくつかの会に出た。

 8月13日、日本基督教団神奈川教区社会委員会〈委員長菊池礼子〉が、横浜の紅葉坂教会で開かれた。そのあと伊勢崎町までデモした。デモ隊の先頭から、高座大和教会のIさんの澄んだ声が「靖国公式参拝に反対しよう」と呼びかける。



「私たちの住む日本にあるキリスト者として、あらゆる抑圧・暴力に反対したイエスに従い、『あらゆる暴力』『あらゆる思想・真情を抑圧する力』『あらゆる平和を脅かす力』に反対します」という大会宣言は、思想信条の自由を守ることを、平和と並んでもっとも大切にする「マスコミ9条の会」と心をひとつにするものだと心強かった。



 ついで8月19日は、緑濃い東秩父の「おがわ町9条の会」1周年に招かれた。生糸と和紙の町の木の香りも真新しい町立図書館に、世話人の努力で80人近い人が集まった。小川町教会牧師長尾邦弘さんや、国交労連の西田一雄さんの奮闘の賜物である。


 こういう地方の草の根の活動が日本の平和を支える、と実感した。「東松山9条の会」の欠川美二(かけかわよしじ)さんが、有明で描いた、呼びかけ人9人の似顔絵を写生した。地域のこの人々に寄せる熱い期待が伝わる作品だと思い大事に持ち帰った。