仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/本HPへの書き起こし


「問答無用」で採決強行  17/05/28

 526日、午後4時過ぎ。稀代の悪法「共謀罪」が衆議院本会議で与党と日本維新の会の賛成多数で可決された。

◆その日の『報道ステーション』(テレビ朝日系)は、本会議の模様を報じながら、「国連特別報告者からも懸念」というタイトルで安倍首相宛てに届いた一通の書簡をとり上げた。
 差出人は国連特別報告者(国連の人権理事会から任命され、プライバシー権の保護を任務としている。各国のプライバシー問題を調査し、国連人権理事会に報告してきた)ジョセフ・ケナタッチ氏。書簡の大要は「この法案が成立すれば適用範囲が広いため、プライバシー権と表現の自由が過度に制限される恐れがある」「犯罪を立証するため、国民への監視を強化する必要がある場合に、適切にプライバシーを保護するための新たな特定の条文や措置が盛り込まれていない」である。

◆この指摘に菅官房長官は「なんでこんなことになったのか・・。強く抗議した」という。日本政府の抗議書の要旨は「国民の意見を十分に踏まえて策定されたもの」「ケナタッチ氏は独立した個人の資格で人権状況の調査報告を行う立場であって、国連の立場を反映するものではない。ここは明確に申し上げておきます」という。(因みに、ケナタッチ書簡は国連人権高等弁務官の公式ホームページにも掲載されている)。

◆日本政府の抗議に対してケナタッチ氏は、「日本政府から受けとった“強い抗議”は、ただ怒りの言葉が並べられているだけで、まったく中身のあるものではなかった」という反論を発表している。
 番組は、ケナタッチ氏に「安倍総理に書簡を送った経緯」を質問した。答えは「この法案が閣議決定されたのは321日だったと思う。法案の文言を見ておどろいた」と。
さらに、「国連の人権理事会に報告する可能性は?」に対しては「私が送った書簡や日本政府からの回答を含めすべてを報告する」という。

◆番組は「結局、多くの懸念が払拭されないまま本会議での採決を迎えることになった」と。 インタビューに答えた日本共産党の志位委員長は、「国連のTOC条約批准のためだと、それを最大の錦の御旗にしながら、その肝心の国連から強い懸念と質問が寄せられているにもかかわらず、それに一切答えず、問答無用の態度をとっている。国会にもまともに説明しない、国連にも説明していない。内外共に問答無用の態度をとって採決を強行したことは本当に許しがたい」と。富川悠太キャスターは。「期限を決めずに、国民の理解がすすむようにしっかり議論してほしい」と結んだ。

◆舞台は参議院に移った。廃案に向けてとりくみはさらに広がることになる。