仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(44)

東京都安全・安心まちづくり条例「改正」―その動きの慌ただしさの裏に潜むもの―09/03/10


東京都安全・安心まちづくり条例「改正」

 

―その動きの慌ただしさの裏に潜むもの―

 

元日本テレビプロデューサー 仲築間 卓蔵

 

 3月3日、ひな祭りの日。自由法曹団東京支部の要請に応えて、マスコミ九条の会の有志3人で都議会要請行動に参加してきました。緊急の呼びかけにもかかわらず、雨模様の寒い日でしたが、都議会棟の会議室は満員ですよ。

 

 何のための要請行動だったか・・・・。『東京都安全・安心まちづくり条例』が慌ただしく「改正」されようとしていることに対して、反対の意思表示をするためです。

 

 この条例が(各方面の反対を押し切って)制定されたのは03年6月。内容は「地域に協議会ネットワークを張りめぐらせ、民間パトロールと監視カメラで“地域ぐるみ、住民ぐるみの防犯の協働”を推進」しようというもの。東京での条例設定を機に、すでに42都道府県で制定されています。中央集権組織である警察が主導していることもあって、構

造・内容はどの条例も共通していますね。

 

 今回の「改正」でどうなるのか・・・。

 

 「繁華街その他の店舗が集積し、多数の来訪者を抱える地域において、店舗、駐車場その他の施設若しくは土地を所有し、若しくは管理する者又は事業を営む者、地域住民、ボランティア及び来訪者は、次条に規定する繁華街等に関する指針に基づき、当該繁華街等の安全・安心を確保するために必要な措置を講ずるように努めるものとする」(第18条の2。繁華街等における安全・安心の確保等)という規定を追加しようとしているのです。

 

 「繁華街等に関する指針」とは、2月9日に発表された「東京都安全・安心まちづくり有識者会議報告書」では、繁華街等の来訪者に対し「街頭や歩行者天国において大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為を慎む」とあります。

 

 「大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為」とは極めてあいまいな表現です。憲法を守り活かす取り組み、反貧困の街頭活動、労働組合の街頭相談、デモや社前行動、ビラまき、われわれが共同してきた四者行動(JCJ、MIC、自由法曹団、マスコミ九条の会)などが禁止される危険性が高い。

 

 若者たちの路上ライブはどうなるのですかね。大道芸はどうなるのですかね。繁華街というのは、パフォーマンスと騒音の自由な空間だといってもいいのじゃないですかね。これも「文化」というものですよ。これは、表現の自由の重大な侵害ですよ。憲法21条、28条に反する。

 

 自由法曹団東京支部長の島田修一弁護士は、「警職法から50年。政府や大企業への要請行動が激しくなるであろうことを予測しての、彼らの(抑圧の)決意をあらためて示している」といっていましたね。そのとおりですよ。

 

 この「改正」案は、3月17日委員会に出され、18日討論・決定。27日の本会議で採決という慌ただしさなのです。とにかく、急いでいるのです。もしも都議会で採決されれば、同様の条例のある41道府県はさっそく「右へならえ」でしょう。悪名高い「治安維持法」の東京都版を許すわけにはいきません。

 

 こんな事態を、メディアはどう捉えているのでしょうか。相変わらずの「政局」報道では、国民の「知る権利」に応えることにはなりません。「あれは東京という地域の問題」だと見過ごせる問題ではないと思うのです。

 

 ぜひ、周囲の人に知らせてほしいのです。そして、東京都議会の対応を注視したいものです。