仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(46)
NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』 いま なぜ09/05/14
NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』 いま なぜ
元日本テレビプロデユーサー 中築間 卓蔵
4月26日。石川県の「加賀九条の会」に呼ばれて話をさせてもらった。そのとき宿泊した「かんぽの宿」に置かれていたパンフを、何気なく手に取って見ておどろいた。
7月17日オープン予定の「日本元気劇場」という施設の宣伝パンフである。それには、「NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』の劇中で中心的存在である日本海開戦のロケ地! 日本を植民地化から救った『戦艦三笠』を再現!」とあり、『三笠』の竣工予定図が大きく掲載されている。
『三笠』の再現予定地(黒崎町の山の上)に案内してもらった。その時点では敷地を囲んでいる塀にパンフを拡大したポスターが貼られていただけだったが、すでにマストは造られているという。
この地は、以前「加賀百万石時代村」として観光スポットにしていたようだが、経営がおもわしくなくなって倒産したという。その土地を買ったのは誰なのだろうか。『三笠』の企画発案は誰なのか‥‥。いまのところ不明である。
加賀の山の中の『三笠』に、なぜおどろいたか‥‥。
NHKは、今年11月29日(日)から3年かけてスペシャルドラマ『坂の上の雲』(90分枠。第一部は5回連続、来年も同じ時期に4回連続、再来年も4回連続)を放送することになっているが、この作品は、司馬遼太郎自身「映像化されたくない。ミリタリズムを鼓吹しているように誤解されるおそれがありますからね」と公言していたものである。
NHKが映像化権をとったのは2001年。『ETV2001』“問われる戦時性暴力”で従軍慰安婦問題をあつかって政治家の介入を受けた時期と重なっている。
NHKは「今年は横浜開港150年。日本の近現代史を見直す」ものの一つとして制作するというが、「『坂の上の雲』はわれわれにとってすばらしい歴史教科書」と言った“靖国派”におもねった企画といってもいい。
開港150年なら、来年は朝鮮「併合」100年である。『坂の上の雲』は、朝鮮、中国侵略の歴史を抜きにしては語れないはずである。NHKが「総力をあげる」意味はどこにあるのか。3年間もやるのは、なぜか。
改憲派は、改憲のための草の根運動を呼びかけている。『坂の上・・』のゆかりの地が、このドラマと呼応して宣伝をはじめたらどうなるのだろうか。ぼくの住まいの隣町・横須賀には、本物の『三笠』が展示されている。きっと利用されるだろう。注意して見ていくことにする。
地域メディアのみなさんも、関心をもってほしい。気づいたことがあったら発信してほしい。小さな情報でも、集まれば情勢認識の役に立つはずである。(JCJ5月号より)