仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(51)ちょっと忘れちゃーいませんか―欠陥だらけの改憲手続法―09/10/21

 

 

 

ちょっと忘れちゃーいませんか

 

―欠陥だらけの改憲手続法―

 

仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデュサー)

 

 

  森の石松 (若い人は知らないでしょうね。 浪曲や映画で知られる清水の次郎長の子分の一人。 船旅の途中、 「清水一家で強いものは」 と物知り顔で話す客に、 「もう一人忘れちゃあいませんか」 と、 思い出させるために躍起になる場面があるのです) じゃないが、 大マスコミのみなさん、 『大事なことを、 忘れちゃあいませんか』

 

  政権交代から、 間もなく2ヵ月です。 アメリカの場合、 100日間の 「ハネムーン」 期間があるそうです。 「しばらく見てみよう」 というのでしょう。

 

  鳩山新政権は苦労しているようですね。 発足以来、 大型公共事業の中止や、 前政権の補正予算の見直し、 新年度概算要求づくりなど 「政治主導の政権運営」 に大車輪で取り組んでいる。 大手メディアも、 「問われる政治主導」 などとその行方に注目していますが、 森の石松ではないが 「大事なことを忘れちゃいませんか」。

  そろそろ 「聖域」 と言われてきた軍事費や米軍への 「思いやり予算」 の話が出るかと思っていましたが、 そんな気配はない。 善意に推測すれば、 「アメリカとゆっくり話し合う」 つもりかもしれませんが、 その課題は避けては通れません。

 

  まぁ、 そのことはやがて明らかになるとして、 「もう一つ大事なことを忘れちゃあいませんか」

 

  その一つが、 07年5月14日に強行された 「改憲手続法」 (日本国憲法の改正手続に関する法律) ですよ。 安倍晋三首相 (当時) が、 「憲法を頂点とする戦後レジームからの脱却」 を唱え、 「任期中の明文改憲」 を叫んでいた中での強行でした。

 

  18もの付帯決議つきの法律なんて聞いたことがない。 まさに 「未完成の欠陥法」 ですが、 この法律の施行は来年の5月18日となっています。

 

  この法律強行からわずか2ヵ月後 (07年7月29日)、 参院選で自民党は惨敗。 参議院では与野党逆転が実現したのです。 「戦後レジームからの脱却」 路線は断罪されました。 そして、 今年の8月30日の総選挙では、 自公連立与党は歴史的な惨敗をすることになる。 安倍政権のもとで強行された改憲手続法は、 二度にわたって国民の断罪を受けたことになりますね。

 

  総選挙の結果、 改憲手続法の攻防を体験していない多くの新人議員が誕生しました。 あのとき、 与党側でこの法律にたずさわった議員の多くが議席を失ったのです。 わずか2年半の中での変動です。

 

  このまま黙っていれば、 改憲手続法は施行されることになるでしょう。 黙っているわけにはいかないじゃありませんか。

 

  折も折、 有楽町マリオン前宣伝行動や各種シンポジュームを共同してきた四者 (日本ジャーナリスト会議、 日本マスコミ文化情報労組会議、 マスコミ九条の会、 自由法曹団) の代表者会議 (10月14日) で、 自由法曹団から、 「安倍政権 (当時) の暴走が生んだ改憲手続法を漫然と施行させるわけにはいきません」 として、 「改憲手続法 (国民投票法) の廃止 ・ 凍結を求める――暴走国会が生んだ未完成の欠陥法――」 という意見書が提示されました。

 

  「待ってました!」 ですね。

 

  内容は、 “明文改憲論の背景と源流” からはじまり、 投票年齢、 最低投票率、 公務員の政治活動など18項目の付帯決議の問題点があらためて明らかにされていて、 それ自体、 貴重な資料となるものです。

 

  マスコミに関係するわれわれとしては、 とりわけ 「国民世論を改憲に誘導することになる有料意見広告」 問題を見過ごすわけにはいかない。

 

  有料のテレビ、 ラジオ、 新聞などの広告が、 資金力のある財界などに独占される危険性は大きいですよ。

 

  広告収入の減少している大手メディアは、 国民投票に関するCM広告を1,000億円規模のビジネスチャンスと見込んでいるともいいます。 広告代理店は、 この金に鵜の目鷹の目でしょうね。

 

  「政治主導の政権運営」 騒ぎの陰で、 来年の5月18日は刻々と近づいていることを忘れないでほしいのです。

 

  四者代表会議の席上、 改憲手続法について国会要請しようという提起がありました。

 

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  11月4日 (水)   10時30分から正午までです。

  集まる場所は、 衆議院第一議員会館第4会議室です。

                (入り口で入館証をもらってください)

  貴重な資料になる 「意見書」 は、 もちろん配布されます。

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  欠陥だらけの改憲手続法は、 いったん廃止するか、 少なくとも無期限に凍結するしかありませんね。