仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(52)世論を気にしているか?『坂の上の雲』10/01/05
世論を気にしているか?『坂の上の雲』
仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデュサー)
謹賀新年
ことしを面白い年にしたいものですね。
鳩山さんや小沢さんが辞めて、民主党もすっきりすればいいんじゃないですかねえ。
普天間問題だって「無条件撤去」ですよ。代替案をどうするかですって?。それはアメリカ政府が考えればいいのですよ。こんなに長い間、外国の基地を置かせているいる国なんて無いじゃないですか。アメリカだって、そんなことは百も承知でしょうに。しかもことしは安保改定50年ですよ。どちらか一方が「安保は時代錯誤だからやめようよ」といえば、1年後にはなくなる仕組みになっているのにねえ。
ぼくも後期高齢者。後期高齢者医療制度は早いとこもとに戻してほしいねえ。
予算がない? 冗談でしょう。「事業仕分け」をもう一度やってほしいものですね。雇用問題だって、大企業も貯め込んでばかりいないで少しは役に立つ決断をしたらどうなんですかねえ。弱い者だけが「痛みを分かつ」・・・そんなことはおしまいにする年にしようじゃないの。
ところで、『坂の上の雲』。第一部が終わりましたね。感想はいかがですか。
四回目の「日清開戦」。見ましたよ。
司馬遼太郎の書かなかった日清戦争前後の朝鮮侵略の三大事件。東学農民蜂起については前回触れました。朝鮮王宮占領事件についてどうだったか。「(朝鮮の)王はロシア大使館に逃げ込んだ」という一言で終わっていましたね。大使館のベランダみたいなところに(王が)立っている写真が一枚映されていました。この間数秒。
王妃殺害事件。取り上げていました。
映像なし。「日本軍によって王妃が殺されるという不幸な事件があった」という趣旨の短いナレーションで終わりです。その挿入の仕方は不自然でしたね。予定にはなかったんじゃないですかね。歴史研究者やメディア関係者が発言してきたことの反映だと思うのですよ。司馬遼太郎は苦笑しているでしょうね。
五回目の「留学生」。日清戦争のあと、秋山真之はアメリカにいくのです。真之は、アメリカの退役海軍大佐に(戦術を)教えを乞います。そのときの大佐の言葉がおもしろい。「戦争はきっかけが必要だ」という。当時、アメリカはキューバをめぐってスペインと事を構えていたのですが、アメリカ市民は動かない。世論を喚起させるために「自作自演」をやる。「メイン号爆沈」です。200人ぐらいが死んでしまう。それがきっかけでアメリカ市民は怒ることになるのです。たしか、「戦争は、えてしてこんなきっかけではじまる」というようなナレーションが入っていましたね。たしか、原作は真之が大佐に会うところはありますが、「メイン号事件」には触れていなかったように記憶していますが、どうですかね。これも、制作者の「配慮」のような気がしています。
しかし、大きな流れは変わりようがありません。今年末は「日露開戦」。来年末は「日本海海戦」なのです。
NHKは、「しまった!」と思っているような気がしてなりません。NHKの方々、どうですかね。
映像化権を獲ったのが2001年。安倍晋三など改憲派が元気だった頃です。昨年8月30日、政権交代がおきた。鳩山さんは「東アジア共同体」構想をいっています。そしてことしは日韓併合100年ですよ。「しまった」と思うのは当たり前ですね。
視聴率も、大々的な前宣伝のわりにはよくない。TBSのドラマ『JIN』なんかに負けている。これも思惑外れでしょうね。ドラマを宣伝すれば、また文庫本も売れる・・・それも当てがはずれているかもしれない。
ぼくの周囲にも、「『坂の上の雲』を読んだことがない」という人がいます。「見てみなければわからない」という人もいる。本を買うことを勧めはしませんが、いま なぜ 『坂の上の雲』なのか・・・考えてほしい。
ことしの大河ドラマは『竜馬伝』、ETV特集では『新春特別アンコール』として「日本と朝鮮半島2000年」をやっていましたね。NHKの「ダブルスタンダード」といってしまえば簡単ですが、エクスキューズのあらわれとみていいんじゃないですかね。番組を見て、モノを言う。そしてNHKの歴史認識を問いつづけたいと思っているのです。
そんなことを感じながらの年明けです。