仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(62)

食べる物がなくなったら 自動車でも食うか! 10/12/01

 

食べる物がなくなったら 自動車でも食うか!

 

仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)

 

 

 関税を原則撤廃しようとするTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についてのメディアのとり上げ方に、「恐ろしさ」を感じているのです。
  学生時代、「”農”は国の大本」と教えられたものです。当時、”農”は”米”だと思っていましたね。あたりまえのことですが、”米”だけじゃない。牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、乳製品、砂糖、大麦、小麦から果物類まで広範囲なのですね。
  TPPへの参加でドッと農産物が入り込むことになれば、食料自給率は13%に落ち込むというじゃありませんか。

 驚いたのは、「しんぶん赤旗」や日曜版を通じて知った農水省の試算です。
  農産物関連の運送業から金融、サービス、建設業など様々な業種にまで影響し、340万人の雇用減になるそうです。

 TPPに参加しないと、自動車や機械などの輸出産業が痛手になるといいます。
  勝手なことを言うものですねえ。
  大企業の多くは、もう生産拠点を海外に移しているじゃありませんか。労働力を外に求めたのですから、この国の雇用は後退のしっぱなしですよ。おまけに、働く人の賃金は切り下げられている。産業の空洞化は、いまにはじまったことではありませんよ。
  空洞化はさらに広がっているのに、農産物の輸入規制撤廃となれば、日本国まるごと「空洞化」ですよ。

 世界の飢餓人口は6億人から9億人超といわれています。
  地球温暖化による気候変動の農産物に与える影響は測り知れません。
  農産物に「一旦緩急」あったとき、どんなことになるのですかね。
  単純かもしれませんが、「食べ物がなくなれば、自動車でも食べればいい」となるのでしょうかね。

 そんなことを承知の上か、それとも、目を向ける気がないのか、新聞は「”平成開国”は待ったなし」「TPP参加へ人材鎖国や規制見直せ」「早期に参加を宣言する覚悟をしめすべきだ」・・・・と。
  テレビも、「第三の開国」「小泉郵政解散の時のように、TPP解散の決断をしたらどうか」と。
  ラジオの論調も、「自由化に乗り遅れるな」が主流ですよ。

 いまやメディアは、「TPP参加」への誘導・煽動担当役です。まさに「翼賛体制」現象です。
  太平洋戦争の後、新聞は「戦争を煽ってきた反省」をしました。
  あのときの「こころ」に立ち返ってほしい。切実にそう思いますよ。

       (これは しんぶん赤旗・日曜版(11月21日付け)”メディア
         をよむ”に書いたものです)

 

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