仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(77)
『坂の上の雲』と城南信用金庫 11/12/11
『坂の上の雲』と城南信用金庫
仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)
NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』。第三部(完結編)がはじまりましたねえ。各方面から 「いま なぜ 『坂の上の雲』なのか」と問われつづけてきましたが、走り始めた車は止まらないようです。
第三部第一回は「旅順総攻撃」。日本の近現代史を教わっていない人にとっては 何がなんだかわからないのではないでしょうかね。つくる側だけが「自己陶酔」している。なんとか見てもらおうと、NHKも苦労してますね。放送日に合わせて電車の車内吊り広告をやっていました。JRと京浜急行のタイアップです。
でも、第一回の視聴率は12.7パーセント(ビデオリサーチ調べ)。”視聴率至上主義”でいうわけではありませんが、テレビドラマの視聴率は(民放では)昔は25パーセントが合格点でしたね。局間競争が激しくなるにつれて その数字も下がってきました。20%になり、いまや15%です。15%以下なら失敗作の烙印を押されるのです。
もともと、司馬遼太郎は「軍国主義の鼓舞につながると思われるから」と映像化を許可していなかったのです。
それを2001年(海老沢会長時代)に映像化権を得たのです。この年は、「従軍慰安婦」問題を扱った『ETV2001』が政治家の圧力で無残に改ざんされた年です。「靖国派におもねった企画」といわれていました。なにせ「坂の上の雲」は、中曽根康弘氏なんかは「われわれにとって すばらしい歴史教科書」とべた褒めしていたものです。
第一部から第二部は 3人の主人公(秋山好古、真之兄弟と正岡子規)が松山を出て東京で「出世」していきながら、日清・日露戦争で活躍していく姿が描かれました。日清戦争は、朝鮮を植民地化する戦争でしたが、司馬遼太郎はそのことを描いていません。「司馬遼太郎の歴史観」は、多くの歴史学者、マスコミ人から批判されてきたものです。
司馬自身、小説の中で「これからは日露戦争を書くことになる」といっているように、日本がいかにしてロシアに勝っていったかの戦術がこれでもかと描かれているのです。
見る人は、歴史的背景を知らされないままですから、「何がなんだかわからない」ことになるのです。
第二回は「203高地」。この戦いで6万人の死傷者を出したといわれています。第三回は「敵艦見ゆ」。最終回は「日本海海戦」です。
民主党は、当初、まがりなりにも「東アジアの平和」といっていました。この作品を見た韓国・中国の人たちはどんな印象をもつのでしょうか。視聴率12.7パーセントといっても、全国で(猫が見ていても視聴率ですが)1270万人が見た計算になります。「いまの閉塞感を、明治の気概で乗り切ろう」などと思う人だって現れるかもしれません。あらためて歴史認識について周囲で話し合ってみてはどうでしょうか。
一方で、歴史を前にすすめようとしている企業もあります。
以前 このブログでも紹介しましたが城南信用金庫です。理事長が「脱原発」といえるメッセージを発表したことで一躍脚光を浴びています。以来、顧客が増えているそうじゃありませんか。
その後、同金庫は東京電力との契約を解除したそうです。「原発に頼らない安心できる社会」に向けて、具体的に踏み出したのです。「営業活動のなかでも呼びかけ、国民運動として展開したい」といっているのです。日本も捨てたものではありません。
ところで、12月14日、九条の会・東京連絡会が「さようなら原発 平和・9条―音楽と講演のつどい―いのちを歌う、あしたを語る」を開催します(なかのZEROホール 19時開演)。魂のテノール歌手・新垣勉さんの歌と、九条の会事務局長・小森陽一さんの講演です。これだけでも納得の内容ですが、福島九条の会・事務局長の真木実彦(東北大学名誉教授)の訴えと、なんと、城南信用金庫の吉原毅・理事長からのメッセージが紹介されます。メッセージの中身は、当日のお楽しみということにしておきます。
司会は、元TBSアナウンサーの藤田恒美さんが引き受けてくれました。これもお楽しみの一つです。
日本は いま 大きな曲がり角。この「つどい」で、新しい年に向かいたいものです。
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