仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(80)

紅白歌合戦・考 12/01/11

 

紅白歌合戦・考

仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)

 

 ちょっと古い話になってしまいましたが、何か忘れ物をしているような、そんな気持ちでいたものですから、さっぱりしたくて書いてしまいます。
 昨年末のNHK『紅白歌合戦』のことです。

  東日本大震災の復興支援がテーマでした。
 「世界からのメッセージ」コーナーには、ドイツで活躍のサッカー選手・長谷部誠さん、香港の俳優・ジャッキー・チェンさん、アメリカの人気歌手・レディー・ガガさんがコメントを寄せ、福島出身の4人組バンド”猪苗代湖ズ”が初登場で『Ilobe you &Ineed you フクシマ』を、歌手・長渕剛さんは、石巻市の小学校校庭から、”ぼくは 悲しみを抱きしめようと 決めたァ!”と新曲『ひとつ』を熱唱、フクシマ出身の俳優・西田敏行さんは、涙をこらえながら ”あの街に生まれてよかったといわせてくれ 大切なものが何か 教えてくれた故郷よ”と謳いあげました。
 西田さんの場面では、集会場に集まった(涙を拭きながら)聴く被災者の方々の姿が中継されました。
 視聴していた多くの人たちと被災地が 心を寄せ合った瞬間だったかもしれません。

  それが 気になったのです。
 3.11直後から流されたAC広告と、なぜかダブって見えたのです。
 あの頃、「思いやり」とか「日本は強い国」とか「日本はひとつ」とか・・・・・、有名タレント、有名スポーツ選手を登場させて、結果的には、東京電力と国に対する責任追及から目を反らさせる役割を果たした あのAC広告とです。
 私には、あのAC広告の「年末集大成版」に見えたのです。

  現実は・・・被災地は大変な寒さです。
 東電福島原発事故は「レベル7」
 放出された放射性セシュウムは広島原発168個分
 県内経済にも大打撃
 避難している人 15万人。6万人強が県外での生活を余儀なくされています
 炉心の中がどうなっているか わかっていません
 放射能汚染の広がりも知らされていません 海洋汚染の実態もわかっていません
 瓦礫の処理も
 岩手、宮城、福島の小中学校のほぼ半数は 復帰のめどが立っていません。

  福島県議会は、県内原発全10基の廃炉を求める請願を採択しました。
 福島では、「放射能除染、全面賠償、原発ゼロ」という願いを受けて、「国・東電」に対する日本共産党を含めた「オール福島」のたたかいという状況が生まれています。

  「国民的番組」といわれたこともある『紅白歌合戦』です。
 未曾有の、歴史的な、大震災、原発震災の年に わざわざ「復興支援」と銘打ってやったのですから、国民的「怒り」が滲み出るものであってほしかった。
 「それは期待しすぎだよ」といわれるかもしれませんが、(大変な制作費をかけたでしょうに)一歩踏み込んだ、一工夫(ほんの僅かなシーン、僅かなカット)がほしかったのですよ。
 これは望み過ぎでしょうか。私ひとりの「天邪鬼(あまのじゃく)」な見方でしょうか。

  いずれにしても、書いてホッとしています。
 読んでいただいてありがとうございます。

 

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