仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(83)
除染の「盲点」 12/04/02
除染の「盲点」
仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)
東京電力福島第一原発事故による放射線の状況は・・・・、除染の実態は・・・・。
詳しいことは知らされていません。
にもかかわらず、政府は 4月1日から福島県の田村市と川内村の一部を避難区域から解除しました。16日には南相馬市の一部も解除されるそうです。
どのような理屈でそうなったのか・・・よくわかりません。
見えてくるのは、避難に「金をかけたくない」という思惑だけです。
3月28日放送の『ニュース23』”なぜ死者7人も 原発事故「除染」の盲点”(TBS系)は衝撃的でしたねえ。
チェルノブイリ原発事故が起きたのは1986年4月。
破壊された原子炉から放出された放射能は 周辺の国々を汚染しましたが、放射性物質を運んだのは風や雲だけではありませんでした。ウクライナや東欧から西ドイツに物資を運んだトラックもでした。
東ドイツ政府は、チェルノブイリから1400キロ離れた東西ドイツ国境に汚染作業員8人を派遣。
彼らはマスクも防護服も着用しないまま(足止めされた)100~200台のトラックの除染にあたりました。「がいがーカウンターがガリガリ音がするので、音を消して作業をつづけた」そうです。
3年後に悲劇ははじまりました。
30代の作業員が肺がんで死亡。
10年間で8人中7人ががんで死亡したそうです。
原因は、トラックの洗車だけではありませんでした。エアフィルターの交換です。エアフィルターに放射性物質が貯まることは見落とされていたのです。
作業員たちの上司だったノイ・ヒルさんは9年後に直腸がんと前立腺がんを同時に発症します。
思い余って労災認定を申請。裁判所は「労災と認定」しました。
しかし、その認定は ヒルさんの死後取り消されます。「学問的には(被ばくが)がん発生するには十分といえない」というのです。
ただ一人生き残った作業員(79歳)は、「日本でも被害者が出るのではと心配している」といいます。
自動車の(とりわけエアフィルターの)「盲点」が明らかになったのです。
福島原発の作業員の被ばくの実態はどうなのでしょうか・・・知らされていません。
自動車のエアフィルターは・・・・そんな指摘はなされていません。
調査していないのか・・・していても公表しないのか・・・。
口を開けば「パニックになるから」といういいわけばかり。
「除染」「放射性物質拡散」の追跡報道に力を入れてほしい。
あらためてそんなことを実感しているのです。
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