仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(94)
めでたくもありめでたくもなし 13/01/02
仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)
2013年が明けました。
ぼくは、このところ「明けましておめでとうございます」と書いた記憶がありません。めでたかったかどうかは、一年が終わってみなければわからない。”天邪鬼”といわれるかもしれないが、こればかりはどうしようもない。
一休禅師が詠んだ歌に、「門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし」というのがあります。気分は、まさにそれです。
昨年の賀状は 『謹賀怒龍年』としましたが、さすがの龍も、総選挙の度に出現する“急拵え政党”の数の多さに戸惑ってか、マスコミの政局報道に目くらまされてか、怒りの矛先を見間違えたようです。
ことしの賀状は 『謹賀庶民派蛇吐火年』です。
「あかつき新聞」の新年号に書かせてもらった一文を紹介して(手抜きかな)新年のごあいさつです。
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謹賀・大蛇吐火年(温和しかった蛇も、火を吐く年になりそうです)。
歴史的といわれた衆院選の大勢が判明した日、いろんな人からメールが届きました。友人の弁護士は、「小選挙区制度の悪弊とはいえ、酷い選挙結果。未だ立ち直れません。来年は護憲闘争の年になってしまいました」と。高校教師の友人からは、「昨日は一切の報道を見ませんでした。今朝の新聞では、小生の想像通りの結果で、憲法改悪が具体的になったとの思いを強くしています。ワイマール憲法下でナチスが台頭し、いよいよナチスが政権を取った時代に入ったと考えています。・・・もう一度、ナチスが台頭する時代の勉強をし直して、市民の力で“真の平和”を守り抜いていかねばならないと考えています」と。
選挙結果への思いは、(ショックの差はあっても)誰も同じだったのではないでしょうか。
そこで、あらためて考えたいのは「大手メディアの果たした役割」です。「その国の政治の水準を決めるのは、その国の国民の(政治的)水準」といわれますが、その国の国民(有権者)の考え方に影響を及ぼす一つの要因は大手メディアにあります。
菅内閣がTPP(環太平洋経済連携協定)参加を表明したとき、大手メディアはこぞって後押ししました。野田内閣での、消費税は上げる、社会保障は切り下げる「一体改革」のときも、大手メディアは大応援団と化しました。米兵犯罪・普天間基地・オスプレイ配備で、日米安保条約問題が見えてきているにもかかわらず、そこに触れようとはしません。自民党が堂々と憲法改悪を掲げているにもかかわらず、真正面からとり上げようとはしませんでした。大事なことから「目を反らさせる」役割をつづけてきたのです。大手メディアにとって、いまや、反「財界」・反「アメリカ」はタブーになっているのです。維新の会の橋下某を「人気者」にしたのも、もとはといえば特異なパフォーマンスの弁護士を起用するテレビ番組でした。これは視聴率(至上)主義のなせるわざです。
こころあるメディア関係者は、内部、外部を問わず、読者・視聴者に信頼してもらえる努力を少なからずしていますが、資本の論理(利潤追求)の前には力足らずです。大手メディアが真に読者・視聴者の立場に立つのを希むのは、「百年河清を待つ」に等しいといっても過言ではないでしょう。
どうすればいいか・・・。改憲の発議が可能(衆議院で)になったいま、わたしたちは、大手メディアの「姿勢」を問いつづけながら、一方で、広告主(大企業)に対してもの申す(「戦争する国にしていいのですか?」「原発をつづけていいのですか?」と)時期にきています。
同時に、大手メディアが「知らせない」のであれば、わたしたちで「知らせ合う」ことが必要です。オルタナティブ(もう一つの)メディアの出番です。
「あかつき新聞」などの業界紙、職場新聞、地域新聞などは、まさにオルタナティブメディアです。これらが活発になれば、大手メディアが「しまった!」と気づく時期がくるに違いありません。各地で「蛇が火を吐く年」にしたいものです。
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新内閣は、早くも「原発再稼働」「集団自衛権行使」「TPP参加」、教科書の「近隣諸国条項見直し」をいいはじめ、安定政権(独裁)のために「参院選勝利」の檄をとばしています。
7月予定の参院選は、「独裁」の誕生を許すかどうかの、まさに歴史的な選挙戦になることになります。メディアにとっても「真意」が問われることになります。ぼくも、情勢にふさわしい行動をしなければ・・・と決意し直しているのです。
ことしもよろしくおつきあいくださいませ。
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