仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(96)
いま なぜ 航空自衛隊宣伝ドラマ 13/04/18
仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)
北朝鮮をめぐる先行きは、いまだにはっきりしません。
韓国大統領は、「北朝鮮との対話をつくりだすための環境をつくりだしたい」といっていますが、一方で米韓合同軍事演習にオスプレイを導入するとか・・・・。それが対話の環境をつくりだすことにつながるとは到底思えません。べつに北朝鮮の肩を持つためにいっているわけではありませんよ。いっていることとやっていることが一致していないのが よくわからないのですよ。「この際だから合同軍事演習は控えるようにしよう」とでもいえば、「対話の環境づくりだな」と理解できるじゃありませんか。
そんなとき、なんと航空自衛隊の全面協力によるものと思われる連続ドラマがはじまりましたよ。 4月14日からはじまったTBS系日曜劇場『空飛ぶ広報室』です。
◆ 『日曜劇場』といえば、RKB毎日制作のドラマ『ひとりっ子』を忘れることができません。
防衛大学進学を強要する父親。特攻隊で戦死した長男と同じ道をたどらせたくない母親。両親の間で悩む二男(山本圭)の葛藤を描いた芸術祭参加作品でした、完成間際になってスポンサーの東芝が「提供中止」を申し入れ、放送することはありませんでした。「放送させよ!」という運動が広がりましたよ。『日曜劇場』はそんな歴史をもっているのです。
以前、フジテレビ系で海上保安官の活躍を描いた連続ドラマ『海猿』(映画化もされましたね)効果で、海上保安官の応募者が増えたといいます。「航空自衛隊は”二匹目のドジョウ”を狙ったのではないか」という人もいます。そうかもしれませんね。
興味があるから見ましたよ。テレビ局の(気の強い)女性ディレクターと(交通事故で足を怪我してパイロットを断念した)空幕広報室の広報官の物語です。
柴田恭兵演じる広報室長が、やたらコミカルで、明るい雰囲気をつくりだそうとしています。普通の会社の営業部みたいな感じですよ。どうやらこの広報室長が狂言回しの役割を果たしていくのでしょうね。
茨城県の百里基地の協力ですね。ヘリコプター、戦闘機、格納庫のシーンが贅沢に出てきます。
ドラマとしての評価はさておき、第1回ですが、女性ディレクターの質問に答える形で「航空自衛隊は”空軍”ではない」「あくまで専守防衛。極限まで撃たないことを命じられている」と説明します。「人を殺すことになるんでしょう?」には、「人を殺すために戦闘機に乗っていると思ったことはない」と若い広報官に答えさせます。「陸上自衛隊の所在地は”駐屯地”といい、航空自衛隊・海上自衛隊は”基地”という」と説明させるなど、航空自衛隊”基礎講座”編です。
最後に子どもを登場させましたねえ。ブルーインパルス(編隊訓練)を見た子どもが目を輝かせて「パイロットにはどうしたらなれますか」と訊きます。「信じつづけて頑張れば、夢はかなう」と若い広報官は答えます。「航空自衛隊へ、どうぞ」という子どもたちへのエールでありメッセージといいていいでしょう。
そこで思い出したのは、1964年頃だったか日本テレビに『列外一名』(きちんと整列もできない、ドジばかり踏むダメ隊員が、やがて一人前の自衛隊員になっていくというはなし)という連続テレビ映画(当時はフイルムものでしたからテレビドラマではなく”テレビ映画”といっていたのです)が持ち込まれた時のことです。
労働組合は宣伝ビラをつくり、抗議行動を展開し、会社と団体交渉をおこない、結果、放送を断念させることができたのですよ。
自民党は、参院選の公約に憲法「改正」を掲げると公言していますね。憲法「改正」は自民党だけではありません。「戦争する国にさせてはならない」という声がたかまっているときに登場した『空飛ぶ広報室』。見過ごすわけにはいきませんね。
追伸
連続ドラマだけれど長続きしそうもなさそうなので、TBSに「この番組は何回やるのですか」と電話したのです。
おかしな返事が返ってきましたねえ。「終わった時が最終回です」なんだって。普通は連続ドラマは1クール13回(1年)とか○○回連続、○○夜連続とかなのですが、「終わった時が最終回」なんて聞いたことがありません。はじめから長続きしないだろうと踏んでいるのですかね。さっさと中止して、あの『ひとりっ子』を50年ぶりに放送したらどうでしょう。TBSの評価は上がるでしょうね。
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