仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(97)
みのもんたさんは言った。「審判はチームのユニホームは着ない」と 13/05/06
仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)
5月5日。東京ドーム。球場内46000人。外にも人があふれていたという。
松井秀喜さんの引退セレモニーと、長嶋茂雄さんと松井秀喜さんの国民栄誉賞授賞式です。
「笑顔があふれた”こどもの日”のダブル受賞。野球の神様が二人にくれたご褒美のような気がしてならない」(東京新聞)は、プロ野球ファンの共通の感想でしょう。
「こんなことありか」と驚いたのが安倍首相のこの日のパフォーマンス。
授賞式の後の巨人・広島戦の始球式。
バッターボックスに立ったのは背番号3のユニホームを着た長嶋さん。ピッチャーは背番号55の松井さん。キャッチャーは巨人軍監督の原さん。
長嶋さんは「いい球がきたら打とうとおもっていたが、インハイだった」と。それでも打つ気満々で、空振り。
球場内は盛り上がるだけ盛り上がっていたようです。
セレモニーだけを観にきた人もいたといいますから、長嶋・松井人気は衰えていないのですね。
「こんな演出も用意されていた夢のような始球式」(テレビ朝日系『モーニングバード』)でしたが、
なんともしらけたのは、安倍首相です。
96の背番号が書かれた巨人軍のユニホームを着て、審判役で登場したのです。
「首相は始球式後、背番号と96条の関係を記者団に問われ”ふふふ”と笑みを浮かべた上で”ユニホームは私が96代(首相)だから『96』なんです”と答えた」(東京新聞)といいます。
「96」という数字は、ある程度世の中の事情を知っている人なら96代目の首相の「96」だなんて思いませんよ。
憲法を変えるためのハードルを下げるための96条改悪であることぐらいは知っている。その先に「九条」改悪、国防軍創設が見えていることぐらいは知っていますよ。
TBS系の『朝ずばッ』(6日)でもこのセレモニーをとり上げていました。「背番号は96代首相ということでしょう」という(ぼくから見ればピント外れな)経済評論家もいましたが、みのもんたさんは「私はちょっと意見が違う」といい、「審判は(チームの)ユニホームは着ない」「野球の珍プレー・好プレーをとり上げるのは得意だが、こんな珍プレーはあり得ない」とズバリ。
各局ともスポーツ番組やワイドショーでとり上げていましたが、ぼくの知る範囲では長嶋・松井の授賞式がメインで、「96」を着けた政治的な思惑は「空振り」に終わってしまったといえるでしょう。
しかし、甘く見るわけにはいきません。「96」を着けて得意げにはしゃぐ姿は視聴者のイメージに擦り込まれた面があります。
「馬鹿な安倍首相だ」と見過ごしてはダメでしょう。「96」を着けた意図を話し合いましょう。「そのうち機会があればね」でなく「今でしょう」。
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