視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)11/09/14

 

「これからの日本」をどうするか

 「どじょうがさ、金魚のまねすることねんだよなあ」―相田みつおの詩を引用して人気を集めた野田佳彦内閣がスタートした。直後に職責を忘れて悪ふざけ発言した大臣が出てミソを付けたが、各社の世論調査の支持率は、朝日53%、毎日56%、読売65%、日経67%、共同62%などまず順調な船出だ▼所信表明演説では、「次の世代に負担を先送りすることなく今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合おう」と訴えたが、具体策は見えず、増税と原発再稼働、日米同盟強化となると、「地道な路線」と手放しで評価するわけにはいかない。支持率の高さは、要するに「いい加減に政争をやめて、少し落ち着いた政治運営をしてほしい」という一般国民の願いの表れでしかない▼実際に被災者や現場をみると、まだまだそんな状況ではない。被災地はまだ手つかずの場所も少なくない。失業保険も切れる時期、雇用問題を中心に、緊急対策も必要。被災して家計を助けようと風俗のアルバイトをする女子大学生も他人事ではないし、「放射能の除染」は緊急の課題。大切なのは具体策だ。「震災からの復興はいまの世代で」というなら、再生可能エネルギー以前に、廃棄物の最終処分地を何万年も後の世代に委ねる原発などもってのほかだ▼大震災と原発事故から半年。社会も政治もメディアもとにかく突っ走ってきた。だが、日本と日本人が走りながらでも、本気になって考えなければならないのは、「これからの日本」をどうするか。「3・11後のジャーナリズム」は正念場だ。