視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)11/11/18

 

誰の利益代表?野田政権

 「野田首相はすべての物品とサービスを交渉のテーブルに乗せる考えを示した。オバマ大統領はこれを歓迎した」のか、それとも、「日本政府として交渉参加に向けて関係国との協議になることにした」と説明した、のか―▼ハワイのAPECを機会に行われた日米首脳会談で、野田首相がTPP問題に関して言ったことばが問題になっている。日本側は「抗議」したが「訂正」を求めるわけではなく、米側は「解釈は間違っていない」と訂正はしない。ばかばかしい「食い違い」だが、実は本質を突いている。訂正を求めれば、「じゃあ、例外措置を残す方針だな?」と凄まれ、強硬に出られるのは怖い。かといって、「言っていない」と頑張らないと、「予備協議で、参加ではない」という説明と矛盾するし、反対派を説得しきれない。かくして、公式な説明と実態がどんどん乖離して進む…というわけだ▼よく考えてみると、実は、日米関係は、もうずっと前から、米国の言い分を何とかごまかして国内に持ち込んで実現させてきた歴史だったということではないか。「センシティブ品目に配慮しつつ、すべての品目を自由化交渉対象として、高いレベルの経済連携を目指す」というのが、閣議決定だった。米側にしてみれば、「9・11」の直後、「ショウ・ザ・フラッグ」と言ったのは、米高官か、大使館の説明か、くらいのことでしかない▼それにしても、あれよあれよ、で進むTPP。一体、野田政権は誰の利益を代表しているのか? やっぱり米国なのだろうか。