視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)11/12/16

 

2011年を送る

 2011年を送る。何といっても「東日本大震災」。12月14日現在で1万5842人が亡くなり、3485人がいまなお行方不明だ。三陸一帯の海岸にある集落は津波の被害で一面荒れ野原となってしまった。福島第一原発の事故は、付近一帯を立ち入りもできない場所に変え、私たちは「地球汚染」の加害者になってしまった▼世界の動きも目を離せられない。米国経済の落ち込みはドル安を引き起こし、1ドルは80円を割った。格差の拡大は民衆の動きを引き出し、「われわれは99%。1%の金持ちは、99%の富を返せ」とウォール街を占拠したデモは地球を一周した。デモは日本の「脱原発」をも励ましている。忘れてはいけない。中東の人たちが声を上げムバラク、カダフィと独裁政権を倒した▼当時の東京を壊滅させた1923年の関東大震災では、「震災手形や復興資材の輸入超過で、経済は一層逼迫し、世界恐慌に至る低迷期に入った」と歴史書は教えている。震災は世の中と人々の気持ちを変え、その中で、ときの政府は2年後に普通選挙法と抱き合わせに治安維持法をつくった。侵略戦争につながる「モノ言えない社会」への道だった▼いま歴史の転換点に立って私たちはどうしたらいいのだろうか。一層社会の「効率化」を進め、市場化、民営化を徹底して、「弱肉強食」「自己責任」の社会をつくることでいいのだろうか。「問題あり」といいながら、ずるずると流されてしまった経験を繰り返してはならない。新しい年に向けて、原点に立ち返って考えてみたい。