視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)12/01/15
欧州危機
「そもそも経済危機はなぜ起きたのか。まず世界的な需要不足が生じていた。そこで米国は非常に変わった役割、世界の最後の消費者としての役割だった」「サブプライムローンという複雑な仕組みまで使いウソの需要を作り出していた、そのメカニズムが崩壊した」▼フランスの人類学者E・トッドはこんな風に言い、「これは単純なことだが、G8やG20の指導者はその基本的なメカニズムを分析せず、公的資金の投入で需要を無理に作り出すことしかしていない」「問題は、自由貿易こそ金融危機の原因ということを認めようとしないことだ」(藤原書店「自由貿易は民主主義を滅ぼす」から要旨)と述べている▼格付け会社が欧州9カ国の国債の評価を下げ、こんどは欧州の経済危機が語られている。その一方で、米国では大統領選を控え、オキュパイ運動が広がり、軍事面では「2つの地域紛争に同時に対処する」という長年の軍事戦略を捨て、経済政策とともに「ドル箱日本」に頼る「アジア重視路線」に足場を移した。無駄遣いはできない。米国型資本主義の危機の状況だ▼翻って日本はどうか。普天間問題の要求も、TPPもイラン原油の輸入制限も易々と受け入れ、租税負担の逆進性を知りながら消費税増税に走る…。経済を支えるために、原発を含めたプラント輸出に命運を掛ける。相も変わらぬ米国追随・新自由主義路線は、内閣を改造しても、問題を解決しない▼トッドが言う通り、自由貿易が民主主義を滅ぼそうとしている。いま、その基本を考えるときである。