視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)12/04/15

 

原発と人権集会

 「この1年間の原発報道は発表ジャーナリズムの限界を示したのではないか。ドキュメンタリーは仮説の検証に始まる。これからの報道は、主体者となる取材者があって報道していく方向にはっきり移っていくべきではないか」―。福島で開かれた「『原発と人権』全国研究交流集会」の分科会での小出五郎さんの提起だ▼研究者、法律家、ジャーナリストに市民が加わり参加者は500人超。痛感したのは原発の問題は収束どころか、問題は一層深刻なこと、そして「メディアの不甲斐なさ」だった。発言者は必ずしも特にメディアを責めない。だが、随所に出てくるのは「本当に大事なことを伝えないメディア」「信頼できないメディア」だ▼かつて、権力から直接的な干渉に闘った時代、市民集会でよく言われたのは、「こんなけしからんことがあった、という圧力や干渉の『被害届』は確かに聞いた。それで一体、あなたはどう闘うのか、私たちは何をすればいいのか」という問いだった。その中で、医師や研究者とジャーナリストと法律家、文化人と結びついた運動が安保闘争を広げ、公害闘争を生み、国会秘密法を断念させた。専門家と結んだ共同行動は、JCJの責任でもある▼事故は収束せず、解決策もない。なのに政府は、論理も倫理もなく「再稼働」や「原発輸出」に走る。このおかしさは、誰でもわかることだ。JCJは「一歩前へ」と独自集会を開き、続いてもう一回り大きな集会の実行委員会に加わった。JCJへの期待は高まる一方だ。それに何とか応えたい。