視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)12/11/15
争点は「憲法」「原発」
総選挙と都知事選の課題ー離合集散にごまかされるな
野田佳彦首相と安倍晋三自民党総裁の党首討論のあげく、いきなり「解散」を宣言、11月16日衆議院が解散された。
これも計算に入っていたのか、都政を放り出した石原慎太郎知事の辞職による都知事選とのダブル選となったが、ここで重要なのは、隠された争点、「憲法」の視点だ。
11月15日現在で乱立した政党は15党。メディアは、石原氏の「太陽の党」や橋下大阪市長の「日本維新の会」の動きに目を奪われているが、これに惑わされるわけにはいかない。主たる争点は「憲法」と「原発」だ。
4年前、新自由主義と対米従属からの脱却を期待されて登場した民主党政権だったが、既に財界や米国の圧力で変質し、自民党とあまり変わらなくなった。そんな中、派手に売り出した橋下徹氏が大阪府知事から大阪市長に転身、「日本維新の会」を結成して国政関与を狙っている。加えて石原氏の辞職と新党結成。右派が勢揃いしたわけで要するにただ政権に就きたい、その一角に入りたいという勢力の野合だ。
恐ろしいのは、石原新党や維新の会などがそこそこの議席を取った場合だ。そうなれば、自公民と右派政党で、衆院の3分の2を超えかねない。連立の組み合わせが議論されるだろうが、改憲草案を発表している自民党のほか、民主党も「憲法提言」を持ち、7月には、首相の諮問機関「国家戦略会議フロンティア分科会」が「集団的自衛権」容認の報告を出している。原発容認、消費税増税やTPPでも、多少の違いが強調されるだろうが、結局は「政策協議」という名の「談合」で、右派政権が登場すれば、突っ走り出しかねない。
問題なのはここでもメディア。「離合集散」に目くらましされて、「争点」を明確に伝える使命を忘れ、「政策」はそっちのけで、無批判に彼らの言動をキャリーしていることだ。
短期決戦になった今回の選挙では、話す内容よりも、少しでもテレビに顔を出した方が有利になる。小政党が乱立し、混乱する中で、合流のための「協議」に時間をかけるパフォーマンスはそれを意識した巧妙なメディア戦略でもある。
憲法を考えれば、原発や貧困も、TPPもみんな憲法の課題であることがわかる。この点では都知事選も全く同じ。都政をそっちのけで、「憲法廃棄」だの「尖閣防衛」だのに走った石原都政と決別し、「人にやさしい東京」をつくれるかどうか。それも都民の一票が決める。