視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)16/10/14
憲法25条と社会保障
「総理はアベノミクスの成果を生かし、社会保障を充実していくと言ったが、その果実はほとんどない。これでどうやって財政健全化目標と社会保障の充実を両立させるのか」―。臨時国会・参院本会議の代表質問で蓮舫民進党代表は、こう言って安倍首相を追及。衆院予算委で共産党の小池晃書記局長は、介護、医療など具体的な改悪計画を挙げて「負担増と給付制限のオンパレード」と追及した▼安倍首相の再登場以来、平和と安保をめぐる憲法改悪が問題になっているが、同時に進んでいるのが「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、「全ての生活部面で、社会福祉、社会保障と公衆衛生の向上と増進に努めなければならない」と政府の責任を明記した憲法25条の事実上の改悪だ▼しかし2012年8月の社会保障制度改革推進法で社会保障改革の基本を「自助、共助、公助」と社会保障の精神を破壊して以来、次々と改悪が進んでいる。いま計画されている関連法案でも、医療では「高齢者の窓口負担や高額医療費の負担額のアップ」、介護では「軽度者の生活援助や福祉用具などの自己負担」などが上がる。目立たないだけに、大きな問題になりにくい▼そして、政府が言うのは、高齢化を理由にした「社会保障費の抑制」。一見当たり前に見えるが、それが当然のように論じるのはおかしくはないか。もともと、社会保障の責任を果たすためにこそ税金がある。それが憲法の精神だ▼無駄な出費、イージス艦だのオスプレイだのを削って、財源を作ればいいのだ。