桂敬一/日本ジャーナリスト会議会員/メディアウォッチ20EX/ 6月28日夜「TBSニュース23」が注目スクープ
  朝鮮総連本部ビル売却事件で明らかになった新事実/07/06/29


 

6月28日夜「TBSニュース23」が注目スクープ
  朝鮮総連本部ビル売却事件で明らかになった新事実

 緒方重威元公安調査庁長官は、昨夜のTVニュースと今朝の新聞報道の扱いで「逮捕
」されたわけですが、これがあることを見越した緒方氏は、TBSとの単独インタビュ
ーを6月20日に受けていました。TBS「ニュース23」は、昨夜「逮捕」のニュー
スが出たあと、これを放映しました。
 ところが、ここで明らかになったことを、29日朝のどの新聞も報じていません。だ
から、捜査側の発表だけで記事を書いた新聞は、どれも間の抜けた紙面です。

 「ニュース23」で緒方元長官が明かした主な事実は、以下のとおり。

・柳俊夫公安調査庁長官が、この件で6月8日に自分に電話をかけて寄越し、真意な 
どを尋ねた。11日にも再度、電話をかけてきて、自宅に部下を訪ねさせてきた。
・11日、公安調査庁からは、総務部長と総務課長がきた。官邸が怒っているという 
ことなので、官邸にいって自分の真意をよく説明してくれ、と頼んだ。
・12日に毎日のスクープ報道が出た。そこで総務部長に、官邸にいって説明してく 
れたのか、と電話で聞いたら、官邸にはいき、総理秘書官に会ったけれど、上が大 変
怒っている、ということしかいわなかったとの話だった。
・総連側代理人の土屋公献弁護士との12日以前の相談の中で、総連側は昨年11月 
頃から官邸方面とコンタクトを取り、本部立ち退きがないようにできないか、と交 渉
しきたという経緯を聞かされ、その間のメモもみせてもらっていた(緒方氏持参 のメ
モのコピー現物映像が画面に出る。また、土屋氏の映像が出て、このメモのオ リジナ
ルが自分のものであることを証言したとの取材結果が、アナウンスで紹介さ れる)。

 緒方氏は、これらの事実を話したあと、自分は罪を着せられ、逮捕、裁判にかけられ
ることになるかもしれないが、そのときは法廷でさらに細かい事実を明らかにしながら
、正義のために闘うつもりだと、このインタビューで語っています。
 その「正義」がどんなものなのか、もっと真面目に注目してもいいのではないでしょ
うか。それとも、落ちぶれた元高官、正義の味方だったものがカネに目がくらんで犯罪
者に転落、というドラマに世間の注目を惹きつけるような役割を、メディアは演じるだ
けなのでしょうか。
 政府・司法当局は、詐欺という刑事事件を無理にもつくろうとしているようですが、
被害者の総連側に被害者の意識がまるでないようなのも奇妙です。政府・司法当局は今
度は、被害者役を演じろと、総連側に圧力をかけ、こちら側も無理にもしだいに被害者
らしくさせていくのでしょうか。こういうやり方にメディアはどう協力するのでしょう
か。
 本当は、北朝鮮問題では、緒方氏のいうような「正義」は絶対に許さない―「北」に
関する限りは、「正義」は政府、官邸のやり方しかない、それに逆らうものはこのよう
に懲らしめられるとする見せしめに、緒方元長官はされつつあるのではないでしょうか

 

 

 「TBSニュース23」の放送は、「News i-TBS の動画ニュースサイト」に「緒方
容疑者、「政治的な弾圧だ」」(NEWS EYE 6月28日18時58分)
で動画映像でみることが
できます。

以上