池田龍夫/ジャーナリスト・元毎日新聞記者/「特定秘密保護法」への警戒感、一層強まる 14/02/21

             「特定秘密保護法」への警戒感、一層強まる

                         池田龍夫 ( ジャーナリスト ・元毎日新聞)

       「憲法の基本原理に反する」と、弁護士が提訴
 自公政権は昨年12月6日、参院本会議で特定秘密保護法案を強行可決、同法は成立した。これに対し、静岡県弁護士会所属の藤森克美弁護士は2月13日、「憲法違反だ」として、国を相手に違憲・無効確認と施行の差し止めを求める訴えを静岡地裁に起こした。
 同法は防衛や外交など4分野で行政機関の長が「特定秘密」を指定し、漏えいした公務員らに最高10年の懲役を科すほか、特定秘密に触れる民間人も処罰対象になる。昨年12月13日の公布から1年以内に施行される。
 訴状では、秘密事項が拡大する恐れが大きく、情報機関の権限が拡大し思想・信条の自由などの憲法の基本原理に違反するなどとして無効を主張。また、同法に基づき起訴された人の刑事裁判では証拠の収集活動が同法違反に問われる恐れもあり、弁護権を侵害されるとして差し止めを求めた。
 同法をめぐる訴訟は全国初で。提訴後記者会見した藤森弁護士は「国民主権でなく官僚主権の国家になってしまうことを心配している」と強調した。

      「知る権利、報道の自由を侵害」……日弁連が抗議
 日本弁護士連合会は12月6日、直ちに山岸憲司会長名で秘密保護法反対を表明した。「参議院では、衆議院で検討が不足していた論点について、十分に検討すべきだった。参考人や公述人の多くが反対意見や問題点を指摘したにもかかわらず、これらの意見を十分に検討しないまま、短時間の審議で採決を強行した。同法の内容面・手続面いずれにおいても国民主権・民主主義の理念を踏みにじるもので、到底容認できない。当連合会では、民主主義社会の根幹である国民の知る権利や報道の自由の侵害、重罰化、適性評価によるプライバシー侵害の恐れをはじめとした様々な問題点が残されている同法について、引き続きこれらの問題点克服のための活動を行っていく。あわせて、国民主権確立のために不可欠な情報公開制度・公文書管理制度の改正、特定秘密保護法の有無にかかわりなく整備されるべき秘密指定の適正化のための制度策定に向け全力を尽くし続けることを誓う」(要旨)と、強行可決に対し理路整然と反駁していた。

      学界有志、各新聞・民放局…映画関係者の批判相次ぐ
 日弁連のほか憲法学界、歴史学界などの研究者からそれぞれ100人を超す「秘密法批判」が続出。ニュアンスに差があるにしても、全国紙・地方紙の大多数(全部か)が「知る権利抑圧の恐れ」を指摘していた。民放局も問題点を挙げて批判。さらにジャーナリスト・文筆業集団、芸術家・映画関係者らが相次いで政府の暴挙を批判した。

      世論調査でも、「修正すべき」が71%
 毎日新聞2月17日付朝刊(世論調査)は、「秘密保護法につき、第三者が秘密指定をチェックする仕組みの強化するなど修正の有無を質したところ『必要だ』と答えた人が71%、『必要ない』の19%を大きく上回った。政府が恣意的に秘密を指定するのではないかとの問題点を挙げ、国民にも強い懸念があることが分かる」と調査結果を報告している。

      国民監視の目を誤魔化せない
 安部政権がゴリ押しした秘密法の無謀さが天下に広がってしまった。岸信介首相時代の「日米安保改定騒動」以来の国民の反撃を招いた事態を、政府はどう打開するつもりだろうか。誰が見てもおかしな秘密法を廃案にして再検討するのが筋だろうが、自公与党政権が応じるとは思えない。政府は今後の国会審議を通じて「修正すべきことは修正し、削除すべき文言は削除する」との姿勢を示すだろうが、小手先の駆け引きには国民の監視の目は厳しい。「奢れるもの久しからず」の轍を踏む恐れなしとしない重大局面である。
   (いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。