池田龍夫/ジャーナリスト・元毎日新聞記者/火山列島に囲まれた原発の脅威 14/10/10

               火山列島に囲まれた原発の脅威

                        池田 龍夫 ( ジャーナリスト ・元毎日新聞)

 長野、岐阜県境の御嶽山(3067㍍)が9月29日噴火してから10日。噴火はなお続いており、気象庁によると、10月6日23回、7日も6回火山性地震が起きている。7日現在で50人を超す遺体が確認された。自衛隊員数百人が救出作業に当たるなど、戦後最悪の噴火災害とった。

九州電力川内原発立地に問題
  原子力規制委員会が審査書案をまとめた九州電力川内原発(鹿児島県)が立地する南九州には、過去に巨大噴火を起こした火山が複数あり、今まで以上に再稼働へも不安の声が高まっている。南九州は、木曽御嶽山や富士山もおよびもつかない阿蘇カルデラ、加久藤・小林カルデラ(霧島山周辺)、姶良カルデラ(桜島周辺)、阿多カルデラかまって(開聞岳周辺)、鬼界カルデラ(薩摩硫黄島周辺)と巨大カルデラ火山が5個も存在している。
  日経10月7日付朝刊社説は、「原子力規制委員会発足後3年目に当たって、改めて規制委に求めたい。例えば巨大な火山爆発のある川内原発の審査を通したが、地元住民への説明が足りない。9日に鹿児島県が開く説明会に、規制庁の委員は出席しないという。(中略)規制委の仕事は原子力の安全向上だけではない。福島事故で損なわれた規制への信頼回復は重要だ。もっとオープンに対話力を持ってほしい」と指摘していた。
  原発の規制基準は半径160㌔圏内の火山を検討対象としている。川内原発では巨大噴火があったことを示すカルデラ(大きなくぼ地)が主なものだけで5つある。九電はうち3つについて、火砕流が川内原発がある場所に達した可能性を認めている。しかし、規制委の審査では、火山の専門家が九電の対策に直接意見を述べる機会がなかった。首都大学東京の町田洋名誉教授は巨大噴火の発生頻度が低いことを認めつつ、「自然は人の思うようには動かない」と強調。鹿児島大の井村隆介准教授も「近くのカルデラで、既にマグマが多量にたまっている可能性も否定できない」と懸念している。規制委^会や九州電力は、「予知」した対策を講じることができるとして川内原発再稼働を進めている。全国各地に地震帯が潜んでおり、特に若狭湾や刈羽原発などの原発再稼働をどう判断するか。火山の専門家たちは「予知」は困難という懸念を示している。規制委は地震学者らの進言や意見を尊重して慎重審議に徹すべきだ。

規制委はもっと地震学者の意見を聞け
  九電は、川内原発から半径160㌔以内の14火山を「将来活動性がある」「活動性を否定できない」と評価。たとえ噴火しても「敷地への影響はない」とし、火山灰の影響は、桜島の噴火で敷地内に15㌢積もる場合を想定して対策を講じた。規制委はこれらの結果を妥当と結論づけた。
  御嶽山でも異常現象はあったが、噴火の前兆としては認識されなかった。巨大噴火の際、前兆現象があるかどうかも分からないが、あったとしても、それが噴火の前兆として認識されるかどうかも不明なのである。規制委は火山学者を集めた検討会を作り、観測態勢やどのような現象を噴火の兆候と考えるかの指針作りに着手。検討会で火山学者から「現在の火山学では巨大噴火の予測は困難」「巨大噴火の兆候とする判断基準がない」など疑問の声が相次ぎ、判断基準は今後の検討課題となっている。しかし田中俊一委員長は「巨大噴火はここ30年、40年の間に起こるものではない。天災がいつ起きるか分からないので社会的活動をやめてください、という考え方では仕事はできない」と述べたそうだ。大嶽山惨事を軽視しすぎている。近くに原発がなかったからの話であってとんでもない認識不足である。この言葉が示すように、サイエンスではなくビジネスが問題なのである。川内原発再稼働の行方が日本の原子力行政の重大な転換点になることは必至である。
  (いけだ・たつお)毎日新聞ОB。