梅田正己/編集者/普天間=グアム移転問題
メディアがやっと伝えたと思ったら10/04/02
■普天間=グアム移転問題
メディアがやっと伝えたと思ったら
梅田 正己(書籍編集者)
さる3月26日、 東京新聞にやっと沖縄海兵隊のグアム移転問題の記事が出た。安保・軍事問題の担当記者として最も信頼され、 頼りにされている半田滋さんの記事である。 しかし一読、 ガッカリせざるを得なかった。
見出しは 「米軍に別評価の二文書」。 その一つは、 1996年、 在日米軍が普天間の移設先として本土の自衛隊基地を検討していたという文書、 もう一つが、 昨年11月発表の沖縄海兵隊の移転を含む、 グアムへの米軍統合計画実施のための 「環境影響評価(アセスメント)案」 である。
半田さんは、 「国外 : 8ヵ所挙げグアム推す」 の見出しでこの文書を紹介、 米軍がアジア太平洋の新たな軍事戦略拠点として検討した候補地のうち、 グアムが満点を取ったことを伝えている。
その通りだ。 このアセスメント案は、 米軍が計画している基地の整備 ・ 建設案をくわしく述べ、 沖縄の海兵航空部隊は、 普天間基地の13倍もあるアンダーセン空軍基地に配備されると書いている。
こういう重要な文書がインターネットで公表されているのに、 政府もメディアも完全に頬かむり、 黙殺してきたから、 私はこのコラムで2度もそれについて書き、 また吉田健正さんの 『米軍のグアム統合計画 : 沖縄の海兵隊はグアムへ行く』 を緊急出版したのだ。
その出版から1ヵ月以上たって、 やっとメディアがこの問題を取り上げてくれた。しかも記者は、 東京新聞の半田さんだ。しかし喜んで読んだ記事には、 こう書かれていた。
「ただ、 米軍は独自に進めるグアムの軍事拠点化計画と、 米軍再編で合意した在沖海兵隊の移駐計画との関連を明確にしていない」
つまり、 2006年5月に日米政府が合意した米軍再編実施の 「ロードマップ」 で、 沖縄の海兵隊8,000人とその家族9,000人をグアムに移転させることになっているが、 そのことと、 「環境影響評価案」 に書かれている海兵隊員8,600人のグアム配備とは、 関連があるのかないのか、 半田さんはわからないというのだ。
半田さんは本当に 「環境影響評価案」 を見たのだろうか。そこには、 沖縄からグアムへ行く海兵隊の部隊(「第三海兵師団」 は在沖海兵隊の師団名)と人数がヒトケタまで書き込まれている。
1 駐留海兵隊司令部 3,046人
2 第三海兵師団の陸上戦闘部隊 1,100
3 第一航空団航空戦闘部隊 1,856
4 第三海兵兵站グループ兵站戦闘部隊 2,550 合計 8,552人
5 一時駐留部隊 2,000 総計10,552人
(前掲 『米軍のグアム統合計画:沖縄の海兵隊はグアムへ行く』 から)
これだけの部隊とその家族が新たにグアムへ行くのだから、 訓練 ・ 演習施設をつくると共に、 住宅や生活のための施設、 そしてインフラを整備しなくてはならない。 そのために、 全費用の (米国よりも多い) 6割、 約6千億円もの巨額の資金を日本が負担することにしたのではなかったか。
もし沖縄の海兵隊をグアムに移すのでなかったら、 どうして日本がグアムの米軍の施設整備 ・ 建設のために6千億円も負担するのか?
「ロードマップ」 の沖縄海兵隊8,000人の移転と、 米軍統合計画の海兵隊8,600人の配備とは関連があるのかないのかわからない、 などと何で半田さんが言うのか、 そのことが私にはわからない。
話は変わるが、 北沢防衛大臣が先日、 テレビで 「では、 普天間のヘリ60機が…」 というのを聞いた。 60機は、 現在、 普天間にいるヘリの数である。 しかし 「ロードマップ」 では、 在沖海兵隊の8,000人がグアムへ行く。 現在の在沖海兵隊の総数は約12,000人だから、 残るのは4,000人だ。 つまり、 沖縄の海兵隊は3分の1に縮小される。 ヘリの数でいえば、 20機だ。
そんなことは小学生でも分かるのに、 なんで誤った数字を撒き散らすのか、 これも私にはわからない。 北沢大臣もたしか、 グアムへ視察に行った。 同行した記者によると、 ろくに見もしなかったようだが、 グアム移転のことは最初から問題外だったらしい。
こうした 「グアムのタナアゲ」 の発生源がどこにあるのか、 これも私にはわからない。 ただ、 半田さんほどの記者があのような不可解なコメントをつけることと、 何か同根のものが潜んでいるような気がしてならない。
もしそんなものがないのなら、 辺野古海岸埋め立ての現行計画に固執するアメリカに対し、 3分の1に縮小するヘリ部隊に、 V字型滑走路2本を持つ新基地が本当に必要なのか、 問い返してみればいいのである。