/岩崎貞明/テレビ朝日系『報道ステーション』06年4月13日放送「普天間移転案は40年前からあった」/06/04/15
テレビ朝日系『報道ステーション』06年4月13日放送
『放送レポート』編集長 岩崎 貞明
このホームページ上では「沖縄からの報告─米軍はなぜ辺野古に固執するのか」として作家・建築家の真喜志好一氏の講演録が掲載されているが、真喜志氏がそこで指摘している「辺野古埋め立て案は40年前からあった」ことを、アメリカなどの取材も交えて検証した10分強のレポートが『報道ステーション』で報じられた。この番組の中では真喜志氏のインタビューも登場する。
(左写真辺野古基地に反対して抗議する沖縄の住民)
沖縄県の公文書館に保管されているアメリカの「海軍施設マスタープラン」(1966年作成)という200ページあまりにもわたる報告書に、沖縄県の辺野古沿岸から大浦湾にかけて、港湾施設と滑走路をもった一大軍事施設の計画案が記載されている。番組では、当時の米海軍大尉でこの計画作成にかかわったエドウィン・マクラクラン氏(70歳・すでに退役)へのインタビューを軸に、この「幻の計画案」を明らかにしていく。
報告書によると、1966年当時、アメリカは辺野古周辺の気候条件や地質などもすでに調査している。辺野古沿岸はサンゴ礁に囲まれた遠浅の海岸で、埋め立てによる飛行場建設が容易であること、隣接している大浦湾は逆に水深が深く、強襲揚陸艦など大型の船を接岸させる軍港にふさわしいことが理由だという。報告書は、ここに軍事基地が建設されれば「将来、沖縄の軍港整備の核となりうる」とまで力説している。しかし、ベトナム戦争の戦費がかさんでいた当時のアメリカは、資金面の理由で議会の承認を得られず、辺野古での施設建設計画は頓挫。それから40年、報告書は埃をかぶったままとなる。
報告書にはキャンプシュワブ(下写真)に「SPECIAL WEAPON」を配備する、とも記載されていたが、これは核ではないかとの質問に、マクラクラン氏は無表情に「その話はできない」とだけ答えていた。真喜志好一氏はインタビューで「辺野古はもともとアメリカが望んでいたものだ」と指摘、普天間飛行場の代替施設としてアメリカがしぶしぶ受け入れたかのような印象になっている現在の大手メディアの報道を暗に批判した。
このVTRを受けたスタジオで、最後に古館伊知郎キャスターが、辺野古での施設建設費用が2000億から3000億円かかる見込みであること、それがすべて日本の負担となっていることに触れた。
米軍基地再編問題が大詰めを迎えている中、アメリカ側の真意を実証する証拠をつきつけた番組の意義は小さくないだろう。米軍関係者の証言を引き出した功績も評価したい。ただ、ちょっと注文をつけておきたいのは、番組内でのこの問題の「扱い」だ。
10分程度の企画という時間の制約にも少し不満を覚えたが、このニュースは当日のラインナップでいうと5番目の項目だった。番組冒頭から順にあげていくと@栃木のリンチ殺人事件判決で警察の怠慢捜査を認めて県などに賠償命令A北朝鮮拉致被害者の横田めぐみさんの夫が韓国の拉致被害者だった(可能性が高い)問題の関連報道Bハトやスズメなどが各地の公園などで大量死(理由は不明)C国会情勢(医療改革問題を中心に小沢民主党の動きなど)D辺野古の基地建設問題、という順番になる。上位4つの項目は、確かにニュース価値の重要性はそれぞれ認められるとしても、いずれも夕方のニュースなどで既報のものと言っていいし、またいずれも独自の調査報道によるスクープでもない。
余談ながら、「アザラシのタマちゃん」や「レッサーパンダの風太クン」など、ニュースに“動物もの”が現れると私たち視聴者にとって重要なニュースが覆い隠されてしまうおそれがあることを筆者は以前から指摘しているが、この番組で言えば「辺野古」は「ハトやスズメ」にやはり“負けた”格好になる。
この辺野古のニュースは『報道ステーション』の独自ネタと言えるものであり、トップニュースに持ってきてもおかしくない項目だと思う。番組開始から30分以上が経過してからの項目というこの位置づけに、沖縄への視線の冷たさや、政府・アメリカに対する“遠慮”のようなものまで、つい深読みしてしまった。(了)