河野慎二/元日本テレビ社会部長・ジャーナリスト/テレビウオッチ(44)辺野古新基地容認の「日米合意」見直しと アジアの連携へ、メディアの論調に変化の兆し 10/12/31

辺野古新基地容認の「日米合意」見直しと アジアの連携へ、

 

メディアの論調に変化の兆し

 

河野慎二/元日本テレビ社会部長・ジャーナリスト

 

 12月17日、 菅直人首相は、 専守防衛の基本方針を大きく転換する新 「防衛大綱」 を閣議決定した。 そして午後には沖縄を訪問、 在日米軍普天間基地を辺野古に移設する日米合意の遂行を、 仲井真弘多知事に迫った。

 

  二つの行動に共通するのは、 憲法9条の遵守を願う国民と、 普天間基地の県外・国外移転を求める沖縄県民の総意に背を向ける政治姿勢である。 裏を返せば、 米国の圧力には無批判につき従う、 独立国の首相としてはあるまじき姿である。

 

  菅首相は、 仲井真知事との会談で 「普天間の危険性除去を考えると、 辺野古はベストではないが、 ベターではないか」 と述べ、 5月の日米合意を履行する方針を説明した。 これに対し仲井真知事は 「日米合意の見直しをぜひお願いしたい。 『県外へ』 というのが私の公約だ」 と拒否。 会談後、 「ベストではないがベターと言うのは勘違い。 県内 (移設) は全てバッドだ」 と首相を批判した。

 

  菅直人氏ほど沖縄県民から訪問を歓迎されない首相も珍しい。 「沖縄には古来、 島の外から訪れる客人を 『マレビト (来訪神)』 と称し、 手厚く歓待する習わしがある」 (沖縄タイムス、 12月17日) が、 県民の総意を踏みにじって辺野古新基地建設を押し付けようとする菅首相は、 その対象ではないのだろう。

 

  辺野古新基地建設を条件付きで容認していた仲井真氏が、 知事選直前に 「県外移設」 に方針転換し当選したことで、 沖縄の総意は 「オール県外」 であることを証明した。 首相周辺も 「行けばボコボコにされるだけ」 と、 訪沖を思いとどまるよう説得したが、 菅首相は沖縄入りにこだわった。 仲井真知事を説得できる見通しのない中で、 首相の背中を押したのは、 11月の日米首脳会談でオバマ大統領に示した約束である。

 

  首相は、 沖縄振興策を持ち出し、 仲井真知事に迫った。 来年度予算から導入する一括交付金について、 沖縄は 「別枠」 として優遇すると説明。 「250億円を下回らない」 と約束した。 札びらにモノを言わせて、 何が何でも辺野古移設を認めさせようとする露骨な 「アメとムチ」 政策である。

 

  しかし、 菅首相の狙いは底が割れている。 朝日 (12月18日) は、 「地元経済界の冷めた反応」 として、 県経営者協会の知念栄治会長のコメントを伝えている。 知念会長は 「(首相訪問は) 何の興味もない。 『またアメとムチか』 という話だ。 アリバイづくりにしか思えない」 と酷評した。

 

■「日米合意見直しで展開しないと、 解決しない」

  NHKニュースウオッチ9、 大越キャスターがコメント

 

  招かれざる首相の沖縄訪問をテレビはどう伝えたか。 17日夜の 「NHKニュースウオッチ9」 とテレビ朝日の 「報道ステーション」 を中心に検証してみる。

 

  NHKの 「ニュースウオッチ9」 (以下NW9) は、 県庁前でカンを叩いて 「アキカン総理は帰れ!」 と抗議する市民の映像からニュースに入った。 「菅総理を迎えたのは、 怒りの声だった」 と冒頭のナレーション。 「日米合意を撤回しろ!」 「帰れ!  帰れ!」 のシュプレヒコールの中、 首相を乗せた車が県庁に入る。

 

  NHKのニュースは、 政治や経済、 外交、 防衛などの取材、 とりわけ首相の動静に関わる取材については、 まず首相が何を発言したかを本記として伝え、 その他の情報についてはサイドの動きとして付け加えるというのがニュース構成の定番である。 NHKニュースに “官報” との批判がついて回る所以だが、 今回のNW9は趣を異にした。

 

  菅首相の “謝罪” や 「辺野古移設はベターの選択」 「辺野古に移せば危険性は相当程度除去できる」 などの発言を型通り伝え、 「日米合意の見直し」 や 「県内 (移設) は全てバッド」 などの仲井真知事の反論はそれぞれ厚めに時間を割いて報道した。

 

  市民の声もインサートしたが、 「日米合意というのは、 辺野古 (移設) でしょ。 撤回してください」 (女性)、 「仲井真知事は頑張ってほしい。 菅総理に強く言ってほしい」 (男性) の二人だけで、 辺野古移設を支持する声はなかった。 マイクを向けても拾えなかったのか。 それとも、 ボツにしたのか。

 

  キャスターのコメントが核心を衝いた。 青山キャスターは 「菅総理にとっては、 5月28日のアメリカとの約束ですが、 仲井真知事の 『県外』 は県民との約束です。 菅総理がひたすらお願いしたからといって、 覆る性格のものではないですね」 とコメント。

 

  これを受けて、 大越キャスターが 「何人かの識者に取材したが、 日米合意見直しを含めて、 局面を大きく展開しないと、 なかなか解決しない。 かなり、 そういう意見に傾いている人たちが増えている」 と締めくくった。

 

■ 「首相は本質を隠蔽して、 丸め込もうとしている」

  浜矩子同志社大教授、 首相に基地見直し求める

 

  テレビ朝日 「報道ステーション」 は、 菅首相が沖縄への一括交付金を別枠で上乗せするなど、 露骨な 「アメとムチ」 政策を示したことに対比させ、 米軍基地返還による経済効果やIT産業による沖縄の東アジア発信拠点化の現状を取材したのが特徴だ。

 

  導入部は、 沖縄戦の中でも最大の激戦地と言われる那覇市郊外のシュガーローフ。 「1週間の戦いで米軍の犠牲者は2千人以上、 日本軍の犠牲者数は明らかになっていない」 とナレーション。 20年前、 米軍から返還され、 ショッピングモールや美術館、 高層マンションなどが整備された新都心になっている。

 

  米軍に接収されていた時 (1980年) は、 年間30億円の地代収入だけだったが、 「新都心開発による経済波及効果は2千億円を超えている。 基地の跡地利用を今後の沖縄振興にどうつなげるかが、 最大の課題だ」 と、 開発会社の社長がインタビューに答える。 新都心を視察した菅首相は 「こんなにたくさん建ってるの」 とやや意味不明の感想を述べる。

 

  仲井真知事との会談で、 菅首相は 「全国一般の一括法にさらに色々上乗せも考えて、 別枠で沖縄振興のための一括交付金を考える」 と発言。 鼻先にニンジンをぶら下げて、 辺野古移設を迫る姑息な手法だ。 「アメとムチのアメの部分があまりにも露骨過ぎるんじゃないですか」 と市民 (女性、 60代) にズバリ意図を見抜かれている。

 

  沖縄県はIT企業誘致にも力を入れており、 香港との間で新たなインターネット回線を整備した。 アジアとの間で最大5倍の速さで通信が可能となった。 インタビューに答えてIT企業の本部長が 「将来、 中国と業務のやり取りをする時、 コストメリットが出てくる」 と県の取り組みに期待をこめる。

 

  仲井真知事は 「沖縄振興策と普天間移設はリンクさせるな」 と強く主張している。 振興策と辺野古新基地のワンパッケージは、 沖縄県民に受け入れられるものではない。 菅首相は 「辺野古新基地」 と 「別枠割り増し交付金」 のセット押し付けを即刻やめるべきだ。

 

  コメンテーターの浜矩子・同志社大教授は 「菅総理はオドオドとした物言いしかしない。 本質的な問題を隠蔽して、 何とか丸めこもうとするからああなる」 と批判。 さらに、 導入部の激戦地シュガーローフに触れて 「沖縄戦を忘れてはいけない。 そこに、 米軍基地がある。 その驚くべき無神経さ、 そこを見直して考えないと、 話にならない」 と指摘した。

 

■恐怖の123.6デシベル普天間爆音被害

  住民の声聞かず、 東京へ戻った菅首相の責任重大

 

  菅首相は翌18日、 普天間飛行場や辺野古新基地予定地を、 自衛隊ヘリで視察した。 読売 (19日、 宮崎県版) によると、 辺野古の海岸では反対派の市民が横断幕などで 「NO  BASE!」 (基地は要らない!) の文字をつくり、 首相のヘリを待った。

 

  ところが、 ヘリは上空を2分旋回しただけで飛び去った。 読売は 「『日米合意を撤回せよ』 などと声を張り上げていた集会の参加者たちは、 『これだけか』 とあぜんとした様子」 「あまりの短さに怒りと失望の声が上がった」 と伝えている。

 

  今回の訪問で首相は住民との対話集会を設定しなかった。 袋叩きにあうことから逃げたというのが真相だろう。 しかし、 難題に向き合う気力、 胆力を示さずに、 普天間問題は解決しない。 首相の姿勢は沖縄県民、 国民の信頼を失うだけだ。

 

  沖縄米軍基地の周辺住民はいま、 いつ起こるかわからない大惨事の恐怖と夜昼問わぬ騒音被害に苦しめられている。 「報道ステーション」 (11月17日) が、 普天間基地周辺の爆音被害が極限に達していることを取材している。

 

  嘉手納基地から飛来した大型のF15戦闘機が123.6デシベルという限界を超える騒音を撒き散らし、 住民を恐怖に陥れている。 「夜の住宅街が、 戦闘機による訓練場と化しています」 と絶叫する山口記者の声が、 轟音にかき消される。 「3夜連続、 ものすごい音です。 とても住んではいられない」 と、 夜空を切り裂く爆音に住民は怒り心頭だ。

 

  スタジオで山口記者は 「やり場のない怒りが広がっている。 爆音の後は、 耳が聞こえない。 まるで、 金属の棒で殴られたような感じだ」 と体験を披露。 さらに 「本土は見て見ぬふりをしている。 沖縄は差別されていると訴えている。 本土はこの実態をもっと知らなくてはいけない」 と強調した。

 

  菅首相は、 深夜の普天間基地周辺に立って、 この爆音被害を体験すべきであった。 それが出来ないのなら、 普天間基地周辺の住民と対話し、 被害の実態を直接聞く責務があったはずだ。 そのいずれも回避した首相の責任は極めて重い。

 

■県民の総意は、 普天間基地の無条件・即時返還だ

  菅政権は見誤ると 「怒りは日本全体に矛先を変える」

 

  2011年を迎えるにあたり、 普天間問題解決の展望を考えてみよう。

 

  2010年を振り返ると、 1月の名護市長選で辺野古新基地反対派の稲嶺進氏が市長に当選し、 2月には沖縄県議会が超党派で県内移設拒否、 県外・国外移転要求の決議を初めて可決。 9月の名護市議選でも、 辺野古新基地反対派が圧勝。 民意に推される形で、 仲井真知事も選挙直前に条件付き容認派から県外移設に基本方針を大転換した。

 

  辺野古新基地容認派が県知事や名護市長を握っていた2009年までと違い、 2010年は 「普天間基地は県外に移転すべき」 が県民の総意となった年である。 言い換えれば、 普天間基地は 「無条件で即時全面返還せよ」 ということだ。 「県外で受け入れる場所がないから、 普天間を固定する」 のは認めない。 そこを誤解してはならない。

 

  菅政権が総意の本質を見誤ると、 沖縄県民の怒りはどこへ向かうか。

 

  米兵による人権侵害に対し、 沖縄人の怒りが爆発したコザ騒動から満40年を迎えた12月21日、 琉球新報は 「コザ騒動40年  民衆蜂起の歴史から学べ」 と題する社説を掲載した。 その中で 「40年前に米軍の圧政に向けられた怒りは、 構造的な沖縄差別を温存する日本全体に矛先を変えつつあり、 血脈のように息づく」 と指摘し、 「政府はそれを見過ごしてはなるまい」 と警告している。

 

  菅首相も読んだという 「小説琉球処分」 の著者で、 沖縄初の芥川賞作家、 大城立裕さん (85) を朝日が取材している。 「大城さんは 『日本政府の沖縄への差別意識は、 今も当時と変わっていない』 と言う。 同時にこうも言う。 『沖縄の民衆のメンタリティは成長した。 本土にこんなにはっきりものを言う時代は初めてだ』。 その思いがどこに向かうのか。 大城さんにもまだ分からない」 (朝日、 11月28日)。

 

■朝日社説 「辺野古と切り離し、 米と基地返還交渉を」

  普天間日米合意 「見直しを」 59%が求める

 

  本土のテレビや新聞など大手メディアは、 「対等な日米関係」を 掲げて登場した鳩山政権に対し 「日米同盟の危機」 を煽り、 鳩山内閣を退陣に追い込む片棒を担いだ。 対米従属と日米安保の呪縛から脱却できない大手メディアは、 沖縄県民から見れば、 過剰な基地負担を押し付ける政府と大同小異の存在に映る。

 

  その大手メディアの論調に若干の変化が見られる。 NHK 「NW9」 の大越キャスターのコメントは紹介した通りだが、 朝日や毎日の社説が辺野古新基地を決めた日米合意の見直しに言及している。

 

  朝日は12月19日の社説で、 「基地の負担軽減に正攻法で取り組むことを通してしか、 沖縄の信頼を取り戻すことはできない」 として、 「辺野古移設とセットとされている海兵隊の一部のグアム移転や嘉手納以南の米軍基地の返還を、 辺野古移設と切り離して実現できないか、 米国と話し合うことも十分検討に値する」 と提言している。

 

  提言の背景には、 朝日が16日の紙面に掲載した全国世論調査 (面接) の結果があるとみられる。 それによると、 辺野古に新基地を建設するとした5月の日米合意について、 「見直して米国と再交渉する」 が59%に上り、 「そのまま勧める」 は30%にとどまった。 朝日は 「国民の多くが合意の見直しを求めている現状が浮かび上がった」 としている。

 

  毎日も18日の社説で 「首相は今回も、 打開に向けた具体的な方向性を提示できなかった。 近い将来、 沖縄が 『県内移設』 を受け入れるとは考えにくい。 残るのは普天間飛行場周辺住民の危険性の固定化である」 とし、 「県外・国外への米軍の訓練移転などの軽減策を、 移設問題と切り離して先行実施するための真剣な検討を求める」 と主張している。

 

■ 「東アジア共同体」 ビジョン実現へ一歩踏み出せ

  アジアを恫喝の地域から平和の共同地域へ変える

 

  もうひとつの視点は、 東アジア共同体構想をどう展望するかという問題である。

 

  菅内閣は、 中国の軍事力増強や北朝鮮の核開発・軍事挑発を 「脅威」 として、 機動性や即応性を重視する 「動的防衛力」 を盛り込んだ新防衛大綱を決定した。 尖閣諸島での中国漁船の行動や北朝鮮の砲撃事件などが、 菅政権の狙いをごまかす “追い風” となった。

 

  自民党政権ですら慎重に対処してきた 「基盤的防衛力」 構想を、 ひたすらアメリカの意に沿い、 弊履の如く捨て去ろうとする菅政権の対応では、 アジア諸国の信頼を獲得できない。 菅首相は、 「武力による威嚇又は武力の行使は、 国際紛争を解決する手段としては、 永久にこれを放棄する」 と定めた憲法9条の精神に立ち返る必要がある。

 

  民主党政権が政権交代直後に打ち出した 「東アジア共同体」 構想こそ、 日本、 中国、 韓国、 北朝鮮に台湾を含めた東アジアの緊張を緩和する唯一のビジョンである。 貿易の拡大による経済的発展を中心に、 文化交流や地球環境保護への共同の取組みなどで、 東アジアが核兵器やミサイルで恫喝しあう恐怖の地域でなく、 平和で豊かな共同地域としての発展を展望することにつながる。

 

■ 「報ステ」 アジア物流の拠点、 那覇空港を取材

  基地依存経済と 「アメとムチ」 は沖縄経済に障害

 

  そのヒントとなる企画を、 「報道ステーション」 (11月25日) が放送している。

 

  企画のテーマは 「基地と経済」。 古館キャスターが 「沖縄は日本で一番南に位置しているが、 沖縄を真ん中にしてアジアを見ると、 沖縄は東アジアの中心にいることが分かる。 マニラやバンコクにも4時間で行ける。 基地と経済という固定観念を外して見ると、 沖縄の胎動が見えてくる」 と冒頭のコメント。

 

  深夜の那覇空港からの記者リポートで企画が始まる。 貨物を積んだ大型機が次々と着陸する。 「台北からの第1便、 そのわずか3分後に成田からの貨物便です。 香港からの便、 関空からANAの貨物便など8機が集中しています」。 空港では、 運ばれた荷物を区分けし、 行き先別に積み込む。 工作機械の部品から書類まで急ぎの荷物ばかりだ。 午前4時、 上海行きの貨物便が離陸に向かう。 スピードが命。 明け方までに、 次々と飛んで行く。

 

  那覇空港が、 東アジアへの物流発信拠点となっていることがよく分かる。 東京からマニラなどは7時間かかるが、 那覇からの所要時間は4時間だから、 那覇が拠点空港となるのはごく当たり前のことだ。 那覇はアジアの活力を取り込むには絶好の位置にある。

 

  歴代政権は沖縄に過剰な基地負担を背負わせる代償として、 基地交付金をばら撒き 「アメとムチ」 の政策を続けてきた。 しかし、 1千億円を投じたといわれる北部振興策にしても、 ハコモノが残っているだけで、 経済効果はゼロに近い。 そもそも、 基地がある限り企業誘致はできない。

 

  地元沖縄の研究者が 「基地は遺物だ。 思いやり予算でしか、 カネは落ちてこない」 「自発的発展をするためには、 沖縄のポテンシャルを活かして、 アジアとの連携が必要だ。 基地なしで、 やっていける」 とインタビューに答える。

 

  企画の後半では、 石垣島や竹富島を視察する香港の大手旅行代理店を取材する。 香港や中国では、 沖縄本島よりきれいな海と豊かな自然が残る離島に関心がある。 竹富島は人口300人の小さな島だが、 独特の文化が根づいており、 香港では興味津々だという。 離島などの “眠れる” 観光資源は沖縄が持つ可能性のひとつとして、 日本全体の発展にもつながると、 番組は指摘する。

 

  アジアとの連携については、 日米安保50年を特集したNHKスペシャル (12月11日) で、 世論調査の結果として報道された。 「日本は安全を守るためにどのような国になるべきか」 という問いに対し、 「アジアの国々との国際的な安保体制を築く」 が55%で最も多く、 「日米同盟を基軸とする」 は19%で 「アジア重視」 の半分以下だった。

 

■メディアは 「日米合意」 見直しの取材に本腰を

  沖縄の怒りに正面から向き合い日米安保にメス入れよ

 

  こうした取材を見れば、 普天間問題の解決の方向性がはっきりする。 アメリカの言いなりに、 辺野古新基地建設の強行を図る菅政権の政策では、 解決の道筋は見えない。 普天間基地を辺野古とは切り離して無条件で返還し、 焦眉の急である危険を除去すると同時に沖縄の経済発展につなげる。 その胎動は 「報道ステーション」 の企画で活写されている。

 

  テレビ朝日だけでなく、 NHKや朝日新聞の取材や論調にも変化が見られる。 この変化はメディア全体から見るとわずかなもので、 メディアの本流にはまだなっていないが、 日米同盟重視一本槍だった半年前までと比べれば、 大きな変化と言える。

 

  2011年の大手メディアの課題は明白である。 まず、 メディア自身が、 この1年で大きく変化した沖縄県民の総意と正面から向き合うことが必要だ。 現場の記者は、 菅政権や霞ヶ関の官僚目線から一歩距離を置いて、 「日米合意」 の見直しの取材に本腰を入れて取り組んでほしい。

 

  日米合意の見直しを実現するには、 当然その根っこにある日米安保条約にも目を向けねばならない。 2010年前半に、 沖縄タイムスと神奈川新聞、 長崎新聞の地方紙3紙が共同連載した 「安保改定50年」 企画を参考にして、 大手メディアも日米安保にメスを入れた大型企画に取り組むべきではないか。

 

  とにかく、 「報道ステーション」 が取材した普天間爆音被害の実態は、 想像を絶する内容である。 テレビ朝日以外のメディアも、 この極限を超えた危険な実態を直視し、 報道を強化する必要がある。 これを見て見ぬふりをすることは許されない。

 

  琉球新報は、 12月21日の社説で 「日米合意の後の世論調査で、 日米安保を 『維持すべきだ』 との回答はわずか7%に落ちた。 沖縄の民意はいつ発火してもおかしくない。 安保の名の下に一地域に犠牲を強いる悪循環を断ち、 民意を反映した政治に立ち返ること。 それが歴史が残した教訓だ」 と指摘している。

 

  この指摘はもちろん菅政権に対するアピールだが、 大手メディアもこの指摘の意とするところを噛みしめるべきだ。 沖縄県民の怒りは大手メディアにも向けられている。 2011年は大手メディアの真価が問われる年になる。