河野慎二/ジャーナリスト・元日本テレビ社会部長/テレビウオッチ(54)言論を殺し民主主義を壊す秘密保護法案廃案へ テレビは今こそ問題の核心衝く報道を強化すべき 13/11/13

言論を殺し民主主義を壊す秘密保護法案廃案へ

テレビは今こそ問題の核心衝く報道を強化すべき

河野慎二 (ジャーナリスト ・ 元日本テレビ社会部長)

 安倍内閣は10月25日、特定秘密保護法案の国会提出を強行、7日の衆議院本会議で審議入りした。法案では、外交、防衛、特定有害活動(スパイ行為など)の防止、テロ活動防止など4分野について、特に秘匿の必要性がある情報を「特定秘密」に指定。国家公務員や警察官らが漏えいした場合には、最高10年の懲役刑を科す。情報を漏らすよう共謀、教唆、煽動した者にも、5年以下の懲役とするなど、厳罰化が際立つ。

 安倍首相は「外国との情報共有は、情報の保全が前提だ」との決まり文句を錦の御旗のように振りかざし、審議を急いでいる。その背景にあるのは、安倍の売国的な対米追随の姿勢である。秘密保護法制の制定を繰り返し求めてきたのは米国で、安倍はこれに応えるべく前のめりになっている。盗聴国家の米国とどんな秘密を共有しようというのか。米国の言いなりになって、日本を「戦争が出来る国」に作り替える企みは許されない。

 法案には21条で「知る権利」と「取材の自由」も盛り込まれたが、「保障」ではなく「配慮」止まりだ。ジャーナリストの取材について、「処罰しない」という条文はどこにもない。「著しく不当な方法によるものでない限り、正当な業務」と規定するにとどまり、行政や公安当局のさじ加減で処罰の対象になり得る曖昧さを残している。国民の目と耳と口をふさぎ、憲法の基本原理を根底から掘り崩そうとする稀代の悪法である。

 安倍が時代に逆行する法案の強行突破を図ろうとするのは、この法案の危険な内容が国民に十分浸透していないと見て、高を括っているからだ。NHKの世論調査(11日「ニュース7」)では、特定秘密保護法案について、「知らない」という回答が61%に上っている。メディアの報道が十分ではないことが大きな原因とみられる。特に影響力の大きいテレビの報道が遅れている。本稿では、この法案に対するテレビ報道を検証する。

■TBS「報道特集」、秘密保護法案の危険な全体像を特集
日本版NSCと密接関連、「厳格管理必要」と情報隠しに狂奔

 TBSの「報道特集」が9月21日、特定秘密保護法案を特集した。同法案の問題点を複眼的に取材しているので、多少長くなるが概要を再録してみたい。番組はまず、毎日新聞の東海林智記者が新聞労連委員長の時に作った〝架空号外〟にスポットを当てる。「西海林記者逮捕」の大見出し。〝西海林記者〟とは、「こんな新聞を出さないために」、自分の姓(東海林)をもじって名付けた〝架空の記者〟だ。逮捕の容疑は、「特定秘密保護法案」が定める、公務員へのそそのかし行為だ。

 東海林「特定秘密保護法案に反対するために作った」。金平茂紀キャスター「けっこう、ショッキングな見出しですね」。東海林「そうですね、かなりドキッとする」。東海林は自分だけでなく、全ての記者が知らないうちに、この「特定秘密」という地雷に触れてしまうと考えている。というのは、労働問題専門の東海林自身が、外交・安保の機密情報に突然、遭遇した経験があるからだ。

 東海林は10年前、イラク戦争の最前線に、日本の民間企業の社員が政府の要請で派遣されているとの情報をキャッチした。この社員が万が一、現地で死亡したり怪我を負った場合、労災は適用されるか、厚生労働省や防衛省を取材した。東海林は「この『保護法』が成立すると、民間人が戦地に行っているということは、『特定秘密』に指定されるだろうから、僕は逮捕される可能性が高い」と指摘し、法案の危険性に警鐘を鳴らす。

 実は、外交・安保の問題で秘密漏えいを処罰しようとする動きは過去にもあった。1985年、中曽根政権は最高刑を死刑とする「国家秘密法案(スパイ防止法案)」の成立を画策した。中曽根自身が「日本はスパイ天国」と衆院本会議で決めつけた。だが、世論の猛反発を浴び、廃案に追い込まれた。28年の歳月を経て、秘密漏えいを巡る法案が再浮上した。なぜ、いま、この法案が必要なのか。

 密接に関連するのが、外交・安保の司令塔として安倍政権が設置しようとしている「国家安全保障会議(日本版NSC)」だ。「報道特集」は、日本版NSCを担当する磯崎陽輔首相補佐官を取材する。磯崎は「海外からの機密情報が増えるのと併せて、より厳格な情報管理が必要」と強調。その上で「特定の情報をもう少しきちんと守ろうという訳で、秘密の範囲が拡大するものではない。通常の取材活動は全く問題はない」と拡大解釈の懸念を打ち消すのに躍起となる。

 これに真向から反論するのが海渡雄二弁護士だ。「今までは、クビを覚悟すれば、秘密を明らかにすることが可能だったが、これからは刑務所へ行く(ことの覚悟が必要)」。海渡が最も懸念するのは、福島原発事故関連の情報公開だ。「汚染水が海に流れ出る。日本と世界の海の安全がかかっている。それが国家秘密になったら、僕が『知っている公務員は公表してほしい』と叫んだら、(刑務所に)連れて行かれちゃう。秘密保護法案の『煽動』にあたるということになる。戦前、そういうことがあった」。

■JCJ大賞受賞記者が原発関連極秘公電をスクープ
特定秘密保護法が成立すれば、情報提供者は懲役10年

 「報道特集」はアメリカのメディア規制に詳しいクリストファー・ウルフ弁護士を取材する。アメリカでは、国立公文書館の「情報保全監察局」が機密指定の解除請求権を持ち、大統領の過剰な機密拡大や情報隠しに歯止めをかける。ウイキリークス事件やスノーデン元CJA職員らによる情報暴露が相次ぐ米国だが、だからといって規制をさらに厳しくすべきだという声は出ていないという。

 ウルフは「情報公開でさらに厳しい取り締まりを求める声は聞かれない。むしろ、情報公開が進み、政府関係資料が公開されるようになった。アメリカの民主主義では、より広い情報公開を求める声の方が強い」とインタビューに答える。また、ウルフは「政府が秘密にする情報は可能な限り限定すべきだ。秘密の定義が曖昧だと、政府関係者がメディアやジャーナリストへの(情報)提供を躊躇してしまうからだ」とも語っている。

 特集の最後に金平が取材したのは、朝日新聞の板橋洋佳記者。大阪地検特捜部の証拠改ざん(証拠品のフロッピーディスク書き換え)事件をスクープし、2011年のJCJ大賞を受賞した敏腕記者だ。板橋は、東電福島原発事故を巡る米軍の動きで特ダネをモノにした。米軍統合参謀本部のマイケル・マレン議長(当時)が原発事故直後、ワシントンの日本大使館に懸念を伝えたという極秘公電をすっぱ抜いたのだ。

 板橋がスクープしたのは、秘密保護法案の「特定秘密」に該当すると考えられる重要文書だ。金平「かなりきわどい」板橋「きわどかった。今も、言えない。外交上のことだからと。守秘義務なんだと」。特定秘密保護法が成立したら、こういう記事は書けるのか。板橋「(情報提供者は)国家公務員の守秘義務にあたると、気にしていた。それに秘密保護法が上乗せされると、余計一歩二歩下がる。裏付けが取りにくくなる」。

 板橋が突きとめた極秘公電は、国家公務員法の守秘義務により、誰もその事実を認めていない。特定秘密保護法が存在していたら、情報を提供した政府関係者は最高10年の懲役刑が科される可能性がある。板橋は「取材のプロセスに気をつけないといけない。メールのやり取りは出来ないし、会う場所も考えなければならない。取材源を守るにはどうすべきか。もし、そういう法律があった場合には相当慎重にやらないといけない」。

 金平がまとめのコメント。金平は「法案がマスメディアの自由の問題と、狭く受け止められるという誤解がある。もっと広く国民一般の知る権利を制約する恐れがあると強調したい」と指摘する。金平は、市民が公けの情報を知りたいと、公務員に接触した場合「そそのかし行為とみなされるケースもある」とした上で、「日本は、情報公開が広がっている世界の動きとは逆の方向に向かっているとの指摘を多く受けた」と締めくくった。

■「日米軍事一体化」と身近に迫る「秘密範囲拡大」の恐怖
浜教授「時代逆行の危険な方向」古館「徹底審議で議尽くせ」

 特定秘密保護法案が国会に提出された25日、テレビ朝日の「報道ステーション」がこの法案を特集した。法案が出された背景を探り、市民にどんな影響が及ぶかにスポットをあてる。カメラが官邸前の市民を捉える。法案の提出強行に急きょ駆け付けた市民が、抗議の声を上げる。「知る権利を制限する法案は阻止したい」「国のトップが情報を隠す恐ろしい国になる」。何としても廃案に追い込むと、決意を漲らす。

 10月上旬、東京で日米外務、防衛の閣僚協議が開催された。発表された共同文書に「秘密保護」が盛り込まれている。情報保全が日米同盟の協力関係に、死活的に重要な役割を果たすことを確認している。これについて、孫崎享元外務省国際情報局長は「軍事オペレーションをやっている瞬間の情報漏えいがないようにする。共通の軍事行動を想定して、漏えいを防ぐ。単なる秘密保持だけではない。米国と一体で行動するかどうかという非常に大きな政策判断(で盛り込まれた)」と指摘する。

 法案の目的は、米国との軍事一体化だけではない。「報ステ」はもう一つの安倍の狙いに的を絞り、取材を進める。この法案ではテロやスパイに関する情報も秘密の対象となっている。その秘密の範囲は、身近な情報にまで広がる可能性が強く、私たちの生活を脅かすことにつながる危険がある。2004年、北海道警察本部の裏金問題を告発した元道警幹部の原田宏二氏は、警察の捜査が広範囲に及びかねないと警鐘を鳴らす。

 原田は「全然、狭い話じゃない。警察は捜査権を持つ。厳密に言えば捜査(対象)じゃないのに、捜査と称してやり始める」。警察は何をやるのか。違反行為をやりそうな人物や団体を内偵し情報を収集し、監視を強化する。「原発の細部の情報は、間違いなく特定秘密になる。例えば、プルトニウムは原子爆弾の原料になる。原発に反対する市民が情報を出せと迫る。犯罪行為にはならないが、教唆とか煽動にはなる」。

 原発再稼働反対など、各種の要求を掲げて行われる市民の抗議行動やデモに対し、その周辺でビデオを回す公安警察の姿が目に付く。肖像権の侵害だが、そんなことはお構いなしだ。原田は「違反行為をやりそうな、蓋然性のある人たちをデータとして集め、監視対象とする。事件として検挙するよりも、相手を揺さぶれる。これ以上出来ないな、危ないな(と思わせる)」。秘密保護法が成立すると、この違法行為にお墨付きが与えられる。

 これを受けて、スタジオで浜矩子同志社大学院教授が「国家が国民に対して、多くのことに秘密を持つのは恐ろしいことで、いみじくも戦時下では多くの国民が知らされていなかった。知らないうちに、とんでもない状況の当事者にさせられていた」とコメント。秘密保護法案は「国民をそういうところに追いやる側面が非常に強い」と指摘する。

 浜はさらに「今、私たちはグローバルな時代に生きている。国境を越えた経済活動の中に組み込まれている。誰も、何も秘密にしないということでいかなければいけない。(秘密保護法は)それに完璧に逆行する非常に危険な方向だ」と、TPPを念頭に置いて批判。古館伊知郎キャスターが「こうやって喋っている私たちの言動が、監視の対象になる」とコメント。浜は「全くその通り。私たちの基本的人権が根源的なところで突き崩されてしまう」。古館「国会で徹底的に時間をかけて議論を尽くしてほしい」と結んだ。

■「罪に問おうと思えば問える。記者を逮捕することも出来る」
「モーニングバード」、保護法が悪用される危険をあぶり出す

 テレビ朝日の「モーニングバード」(10月28日)も、特定秘密法の危険な狙いを明らかにしようとする点で、意欲的な取材を展開した。玉川徹キャスターが「そもそも今の秘密保護法案、悪用されないと言い切れるんですか?」と企画の意図を説明。「国の秘密はある程度しょうがない。私たちは関係ないと思う人は多い。本当に関係ないのか」と視聴者に問いかける。

 玉川がまずインタビューしたのは、市民オンブズマンを主宰する新海聡弁護士だ。玉川は「政府は秘密の範囲を限ると言ってます」と水を向ける。新海は「問題は、テロ対策を理由として、特定秘密を指定できるとしている点だ。あらゆる点がテロ対策に結び付けられる」と述べ、原発を例に挙げる。「原発の事故の情報や構造に関する情報、事故の対処の方法とかが、テロに利用されると(行政は)考える。原発に関する情報はすべて非公開になる。住民の安全より情報の非公開が優先される」と警鐘を鳴らす。

 次いで、日弁連の清水勉弁護士(日弁連秘密法制対策本部事務局長)を取材。清水は「法案は、秘密の範囲が非常に広く、かつ曖昧で、それが処罰とリンクしている。処罰範囲がどこまで広がるかわからないという重大な欠陥がある」と指摘。官邸前の脱原発デモや反TPPデモを例示し「間違いなく(法案が規定する)テロリズムになる」。そして「公安警察は脱原発とか反TPPの動きを組織的に調べている。それを報道として、市民グループとして調べようとする会議は『共謀』となる」と述べ、法案の悪用拡大を警告する。

 玉川は「法律を悪用して、政治的なことをやっている一般市民を逮捕するなんてないだろうと、多くの人は思っている」。清水は2004年の立川反戦ビラ事件を示し「このビラ入れがなぜ有罪になるのか。公安は、ビラの内容を見て逮捕・起訴したり、極めて恣意的にやる。今回法律が出来てしまうと、公安警察が何をテロリズムに指定するか分からないから」。玉川「なんでも出来ると」。清水「そういうことだ」。公安警察が何をやっているかは全く闇の世界だ。秘密保護法の成立は公安に〝凶器〟を与えるに等しい。

 玉川はこの法案をまとめた自民党の町村信孝衆院議員を取材する。玉川が「市民の政治活動や、メディアの監視活動を萎縮させることが目的ではないのか」と切り込む。町村は「原発を取材できなくなるとか、萎縮するとか誇大に言う人がいるが、そんなことはハナから考えていない」と否定する。玉川が「公安当局が(法律を)運用する。条文を見ると不安だ。例えば、国にこの主張を呑んでくれと『強要』すると、法律上はテロリズムになる」。町村「何でその人がテロリズムになるんですか。そんな対象にはならない」。

 メディアの口を封じるには、逮捕という強制力行使が最も効果的だ。沖縄密約をスクープした西山太吉記者の逮捕・起訴が、当時のメディアに与えた〝沈黙効果〟は大きなものがあった。この法案は24条で「共謀、教唆、煽動した者は5年以下の懲役に処する」と定め、メディアへの萎縮効果を狙っている。玉川はこれを念頭に置いて町村に質問する。「例えば、私が自衛隊を取材する。スタッフと、どうやったら情報を取れるか『共謀』する。これも(罪に)問おうと思えば問える。私を逮捕することは出来てしまう」。

 町村は「そんなことで逮捕されるなんてことは100%ない」。玉川は「なぜ、こうした心配をするのかと言うと、微罪逮捕っていう現実が今までにもある。公安当局がある目的を持って圧力をかけることが、現実として心配される。この法律を別の使い方をしようと思えばできるというのが心配なのだ」と食い下がる。町村「ジャーナリストの活動を制限するためにこの法律をわざわざ作るのではない」。玉川「そういう風には使わないと」。町村「使いません」。玉川「絶対に使いませんか。運用当局は」。町村「使いません」。

 玉川と町村のやり取りは、基本的なところでかみ合っていない。その理由は、核心を衝いた玉川の質問に対し、町村がまともに向き合わず、はぐらかしの答えに終始しているからだ。玉川は、その点も承知の上で二の矢、三の矢を用意し、町村を問い詰めている。だから、「ご意見拝聴型インタビュー」にはなっていない。その結果、町村が衣の下に隠そうとした鎧をかなりの部分あぶり出すことに成功している。法案の真の狙いを明るみに出そうとした、玉川の粘り強い取材は評価できる。

■保護法案を傍観し、報道に手を抜けば自縄自縛につながる
暗黒社会招く「国民監視法」廃案へテレビは今こそ集中報道を

 法案審議は今週末から重大な局面を迎える。会期末まで3週間余り。衆議院の特別委員会は13日、参考人質疑を行った。自公両党は審議を尽くさないまま、採決の条件づくりを急いでいる。安倍は早くも強行採決の機を狙っている。衆参の数を頼りに暴走する危険がある。安倍の暴挙を阻止するには、世論をさらに大きく盛り上げることが必要だ。そのためには、メディアが報道を質量ともに一段と強化することが必須の条件だ。

 朝日は8日、「社会に不安 廃案にせよ」と題する大野博人論説主幹の署名入り原稿を一面に掲載した。大野はこの中で「最大の問題は『秘密についての秘密』だ。この法案によると、政府がいったいどんな情報を秘密にしているかも秘密になる」「市民運動などが、どこからか監視されているのではという不安。『秘密についての秘密』という仕掛けがあれば、秘密の領域はどんどん増殖し、社会に不安が広がる」と指摘、「特定秘密法案は廃案にするべきだ」と主張した。至極真っ当な大野の主張は大きなインパクトを与えた。

 朝日は社説(10月26日)でも、「今回の法案で示された秘密保護のやり方は、漏洩を防ぐという目的を大きく踏みはずし、民主主義の根幹を揺るがす恐れがある」として「問題だらけの法案成立に強く反対する」と主張。毎日と東京の2紙も明確に反対を打ち出している。注目されるのは日経の論調で、10月20日の社説では「特定秘密法案は見直しが必要」として、政府に拙速な審議をしないよう求めている。

 こうした新聞論調の変化や、上記3本の番組など報道が強化されるのに伴い、特定秘密保護法案の危険性について、世論の動きにも変化が現れた。毎日の世論調査(12日)によると、「今の国会にこだわらず、慎重に審議すべきだ」が75%に達している。法案反対は59%だった。朝日の調査(12日)でも、「今国会で成立させる必要はない」が64%に上っている。また、68%の人が秘密の範囲拡大に「不安を感じる」と答えた。

 11日、テレビでキャスターなどを務めるジャーナリストが記者会見を開き、特定秘密保護法案に反対する声明を発表した。会見に参加したのは鳥越俊太郎、岸井成格、金平茂紀3氏ら8人。声明では「取材・報道の自由が著しく制限され、国民の知る権利が大きく侵害されかねない」としている。東京(12日)は「声明に同調するが、名前を出せないテレビ関係者もいるといい、金平茂紀さんは『この息苦しさこそ秘密保護法の本質。修正ではなく、廃案にすべきだ』と主張した」と伝えた。

 世論は、法案の慎重審議を求めている。しかし、安倍の暴走を止めるにはまだ十分ではない。修正とか継続審議ではなく、廃案に追い込むには、世論を一回りも二回りも大きく盛り上げる必要がある。21日には日比谷野外音楽堂で大規模な集会と国会請願デモが行われる。26日には当会とJCJ、MICの主催で「メディアの現場から秘密保護法の廃案を求める」緊急集会が明治大学で開催される。11日に声明を発表した鳥越、岸井、金平ら一線のジャーナリストが「廃案」を訴える。

 言論の自由を死滅させ、民主主義を根底から崩すこの悪法の成否は、テレビにとっても死活的な影響を与える。テレビがこの法案を傍観し、報道を疎かにすることは、取材・報道の自由を権力に売り渡すことにつながる。自分の手で自分の首を絞めるに等しい。テレビは今こそ、カメラとマイクを駆使して、悪法の廃案へ報道を集中すべきだ。ファクトのみを伝える従来型の報道では済まされない。悪法の成立を許せば、悔いを千載に残す。言論の自由が危機に瀕している。テレビは今、正念場を迎えている。 (敬称略)