水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)
「ヘボやんの独り言」より転載
ナヌムの家には「歴史館」が併設されている。入館料・5000ウォンが必要だが、日本人が来た場合、韓国人と結婚し慰安婦問題を後世に残すべきだとがんばっている山形出身の女性が案内してくれた。植村さんとは旧知の仲のようだ。この日は日本の高校の生徒たちがやって来て、一緒に案内してもらった。若者たちにそっとパワーをもらった。
館内に入ったとたん、大きな絵が目についた。韓国の若い女性が日本兵に連行される様子を描いたものだ。実にリアルである。証言をもとに描かれたものだろう。こういうことが各地で行われていたことを思うと、改めて怒りが起きてくる。
【連行状態が描かれた絵画】
慰安所は大陸だけでなく、太平洋にまで広く設置されていた。慰安婦は、各地に送られていたのである。戦後、祖国の土を踏むこともなく、そのまま亡くなった人もいることだろう。戦争の悲惨さと日本がおこなった人権無視の蛮行は度し難く、許されるものではない。
博物館のなかを案内してもらっている最中、各国から贈られた千羽鶴が目についた。その中の一つをよく見てみると、日本からのもので「新日本婦人の会千代田支部」と書かれている。偶然とは面白いものだ。いつも千代田で一緒に活動している仲間たちがここにやって来た痕跡に、親しみを感じた。
【新婦人千代田支部から贈られた千羽鶴】
歴史館を一通り見て、植村さんの案内でナヌムの家の中に入った。リビングだろうか、そこには二人のハルモニがいた。顔見知りの植村さんは、親しげに声を交わし激励していた。写真は、李玉善(イ・オクソン)さんだ。イさんに、何のてらいもなく「日本人にしてほしいことがありますか」と聞いた。実に驚くべき返事が返ってきた。
「アベさんを辞めさせてほしい」だったのだ。ハルモニたちは、従軍慰安婦問題で安倍首相がかつて何をしたか知っているのだ。昨年12月の「日韓合意」も彼女たちは認めていない。「安倍首相がここまで来て、謝罪したら(合意について)考える」という。
その怒りは、計り知れない。この思いを真正面から私たちは受け止める必要があるのではなかろうか。後述するが日本は戦前、朝鮮半島を35年間にわたって植民地として扱ってきた。その辛酸を、従軍慰安婦問題を含めて韓国国民は忘れていないのだ。イ・オクソンさんの一言は、日本国民全体が考えるべきことなのかもしれない。心が痛かった。
【植村さんとイ・オクソンさん】
【ハルモニたちと記念撮影】
(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
中央防災会議の専門調査会がまとめた関東大震災時の「朝鮮人虐殺」報告書の一部を、内閣府がホームページから削除(朝日新聞ウェブ)。またしても記憶を消そうというのか。