水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)
「ヘボやんの独り言」より転載
久しぶりに元旦の社説を調べてみた。対象は、朝日、読売、毎日、東京の4紙だ。まず見出しから見てみよう。▼朝日=来たるべき民主主義――より長い時間軸の政治を▼読売=緊張を安定に導く対北戦略を――眠っているカネは政策で動かせ▼毎日=論始め2018 国民国家の揺らぎ――初めから同質の国はない▼東京=明治150年と民主主義――年のはじめに考える――となっている。
各社とも見出しを読む限り〝つづきもの〟になりそうだが、ここでは敢えて1月1日付に絞り込みたい。以下、新聞ごとにみてみたい。
朝日はより長い時間軸の必要性を提起しながら、 耳なれない「シルバー民主主義」という言葉がでてきた。日本では高齢者の有権者比率が高まっていることから、ここの影響力が高いことを考慮した政治が求められると強調している。
そのうえで社説は「結果として、社会保障が高齢者優遇に傾けば、世代間の格差は広がる。長期的には財政を圧迫し、将来世代に禍根を残す。」と主張し、高齢者に気配りをすることは「目先の利益にかまける政治、時間軸の短い政治の弊害」と指摘する。ここでも「時間軸」という言葉が出てきた。社説は長い目で物事を考えろと言いたいのだろうが、私にはすっきりしない。
確かに「先を見据える」ことに異論はないが見据え方として、高齢者と若い世代の格差を広げないために、高齢者は〝我慢をすべき〟だと行間で語っている。むしろいま大切なのは、高齢者も含めて安定した生活である。年金の切り下げは年々ひどくなり、病院にいけない年寄りが増えている。これでは先を見据えることはできない。
次に「毎日」であるが、冒頭で北朝鮮とアメリカの摩擦を批判、明治維新から150年経た日本でも国際社会との衝突が続いていたことに触れながら「あるべき国家像とは。自らを省みて問いかけが必要な節目である。」と述べている。
伊藤博文が明治憲法を起草したとき、欧州はキリスト教を国家の基軸にしたことを日本に置き換え、天皇をそれにすることを考えたことを紹介。そのうえで「現代の国家は、国家主権、民主主義、グローバル化のうち、どれか一つを犠牲にせざるを得ないと言われる。相互に矛盾が生じるためだ。国際政治のトリレンマという。」と強調している。
毎日社説はそういう問題を提起しながら、民主主義の重要性を説いている。「人間の考えは一様ではない。階層や生い立ち、地域、年代、性差によって意見は異なる。そして違いがあるからこそ、民主主義が必要とされる。互いに異論を認め合い、最終的には全体の結論を受け入れていくプロセスに値打ちがある。」と。これは同感である。
確かに国民は同質ではない。それを同質化させようというのが安倍改憲の本質であり、9条改憲はその典型である。看過してはならない。
★脈絡のないきょうの一行
毎年参拝する神社に初詣でに行った。通って40年近くなるが、おみくじで初めて「大吉」を引き当てた。今年はいいことありそうな予感。