水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)
「ヘボやんの独り言」より転載
カレンダーどおりきょうから仕事はじめです。改めて、本年もよろしくお願いいたします。今年の課題は山積している。そこで労働組合らしく、賃上げ問題から考えてみたい。
賃上げの環境は整っている。株価は上がり、景気は回復しているというからだ。連合はそれを見据えて昨年の11月段階で「賃上げ2%」基準を示した。ところが政府は3%を提案してきたのである。これに対応すべく、連合はベア2%、定昇2%へと賃上げ基準を修正した。これはこれで良し、としよう。
大企業をはじめとした日本の5000社の内部留保は300兆円を超えた。そのうちの5%を使えば、労働者一人当たり1万円の賃上げは可能であるという試算がある。1万円は小さくない。景気が回復しているのであればいや、そうでなくても、即刻賃上げを実施してほしい。そのことが破綻したアベノミクスを回復させる最短の道でもある。
労働環境はどうか。「働き方改革」という名を冠した残業代ゼロ法の企みは消えていない。むしろこの通常国会で得意の強行採決で突破しようとさえしている。「高度プロフェッショナル制度」なる耳障りの言い言葉が飛び交っているが、早い話、残業代ゼロ法だ。
これは危ない。年収1000万円を超える労働者を対象にすると言っているが、だまされてはいけない。あの派遣法が制定された時、限られた業種だけがその対象となっていた。ところが今ではその枠はない。同じように、残業代ゼロが限られた高所得層に適用されることになったら、今度は遅からず全労働者に波及する。これは断言できる。決してヒトゴトではない。
そもそもこの「働き方改革」という表現は変だ。働き方を変えるのは当の労働者であって、労働者側から言い始めたのであれば納得がいく。ところが今のそれは政府が言い始めたものだ。ということは上から目線であり、正しく表現すれば「働かせ方改革」というべきだ。いや「改悪」と言ったほうが分かりやすい。
雇用に関して「18年問題」という言葉があるのをご承知だろうか。今年4月から非正規労働者のなかで5年以上勤務した人は、本人が希望すれば「期限のない雇用関係」を結ぶことができるというものだ。これをめぐって、昨年秋から使用者と労働者の攻防が始まっている。
その典型ともいえるのが、大学の職員だ。たとえば、東京大学だけで見れば非正規職員は3500人いるという。その人たちのほとんどは勤続5年に達することになり、今年4月から「期限の定めのない労働者」になることができるという。労使間の交渉はすすんでいるというが、私が所属する千代田には、日本大学、明治大学、法政大学などマンモス大学が集中している。これは他人ごとではない。(つづく)
★脈絡のないきょうの一行
長崎で火災によって幼児2人が死亡。この季節、火災によるいたたましい事故が絶えない。手を合わせるだけに隔靴掻痒感。