戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

「テロのインスタント化」の恐怖 17/08/19

明日へのうたより転載

 スペインのバルセロナで13人が死亡するテロがあった。「スペイン北東部バルセロナ中心部のランプラス通りで17日午後5時(日本時間18日午前0時)ごろ、歩道に車が突っ込んだ。地元政府などによると死者数は13人、重軽症者は約100人に上り、うち15人が重篤な状態という」(19日付『毎日』)。事件後ISが犯行声明を出した。ランプラス通りというのは観光客でにぎわう繁華街である。

 1996年2月、おれは佐藤一晴さんが団長の「MICイベリア半島周遊旅行」に夫婦で参加してバルセロナに3泊した。佐藤さんと同じように故人になられた加藤親至さん夫妻、荒川恒行さんも一緒だった。市内見物でガウディが建てたホテルや公園を巡ったが、この時ランプラス通りも通った記憶がある。

 今回のテロの犯人は、レンタカーのワゴン車に乗って時速80キロのスピードのまま500メートルを、人をはねながら猛進したという。ISのテロというと前は銃や爆発物だったが、最近は車を凶器に使用することが多い。昨年7月、南仏ニースでトラックが花火見物客を襲い86人が轢き殺された。

 19日付『毎日』はこの「車を使ったテロ」を「テロのインスタント化」と分析した内藤正典同志社大教授の談話を紹介している。内藤教授によれば、車は誰でも簡単に入手できるし、テロ実行者としての特殊な訓練も要らない。ISの主張に共鳴した普通の人がいつでも凶行に及ぶ可能性があるという。

 ISがシリアの拠点を失い、集中していた戦闘員が世界に飛び散っている、と内藤教授は指摘する。「この種のテロはこれからも続くだろう。こうなると、人が集まる場所がいくつもある日本でも例外ではない。米国と協調する日本の中東政策は、イスラム教徒との緊張関係を強めるおそれがある」。

 バルセロナのテロを受けて安倍首相は「大きな衝撃と憤りを禁じ得ない。卑劣なテロを断固として避難する」というメッセージをスペイン首相にいち早く送った。文面は決まり文句の範囲を出ないが、アメリカ追随の日頃の言動と合わせれば、十分テロの標的となり得る。軽率に動いてもらいたくない。

 「車を使ったテロ」を防ぐ難しさが改めて浮き彫りになったのが今回の事件だ。戦力放棄の憲法を持つ日本の役割はどこにあるのか。今こそ世界史的に試されているのだとおれは思う。