戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
一昨日9月7日午前11時から東京地裁で、明治乳業事件の第3回弁論期日があった。裁判長はこの間に提出された当事者の準備書面について確認した後、原告・争議団、被告・中労委、参加人・会社の代表を別室に呼んだ。争議団と中労委の代表は3分弱で戻ってきたが、会社側熊谷弁護士が姿を現したのはそれから約10分後だった。今後の進行について特に会社側に対する説得が行われたものと思われる。
その席上会社がどんな主張をしたか。9月4日付「参加人準備書面(1)」で会社は、中労委命令の「付言」で「より大局的な見地に立った判断が強く期待される」と要請されたことに対し「妥協して解決することなど、会社として受け入れることは到底ありえない」と頑なに和解を拒んでいる。
準備書面によれば会社が和解を拒む理由は次の点だと思われる。①市川事件も含めて申立人らに対する誹謗中傷の事実はない、②申立人らと職制を中心にした「インフォーマル組織」の対立は労労問題であって会社は関知しない、③市川事件は最高裁判決で解決済みであって、最高裁で認められなかった事実が本件で認められる余地はない、④申立人らはすべて定年退職しており会社には既に労使紛争は存在しない。
それぞれに詳しく反論したいが紙幅がない。ただこれらの会社主張に対しては、命令の「付言」だけでなく「事実認定」「判断」でも全て明確に論破されていることだけは言っておきたい。その命令を維持するために行訴の参加人になったのだから、主文以外はすべて反対だというかのごとき姿勢は許されない。
会社はこのまま話し合いを拒否し続けて、申立人らをねじ伏せて無条件降伏させることを狙っているように思われる。狙うのは勝手だが少し甘いのではないか。明乳争議をこのままでは終わらないとする大きな共闘の輪が広がっている。争議団や共闘会議、弁護団も長いたたかいにかかわらず意気軒高である。
このほど、食品一般ユニオンがILOに申請した「結社の自由に対する重大な侵害」との申立書が受理され、「当局は日本政府に所見提出を働きかける」との返書が届いた。明治ホールディングの大株主の中に解決への同調を示す芽が生まれてきた。雑誌「ZAITEN」の「明治HD『消費者無視』の労務屋経営」と題する記事に見られるように世間の見る目も厳しくなっている。
定年退職しても在職中の不正取扱いの是正を求める権利は喪失するわけがない。会社は次回10月2日の次回期日までに和解打診への返事を持ってくると約束したようだ。会社の冷静な判断を期待する。