戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

「日朝平穣宣言」15周年に思う 17/09/18

明日へのうたより転載

 9月17日は「日朝平穣宣言」から15年目に当たる。小泉純一郎元首相が北朝鮮の金正日総書記と会談して発表した宣言だ。当時も、あの北朝鮮を相手にとよくもこれだけできたものだと評価された。17日付の『毎日』にその要旨が載っている。今の金正恩や安倍晋三首相と比べて政治姿勢の違いが鮮明だ。

 「小泉純一郎首相、金正日朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)国防委員長は日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本的利益に合致、地域の平和と安定に大きく寄与するとの認識を確認した」

 「日本側は過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明した」「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した」。

 「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を順守することを確認した。核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した」。「国際的合意の順守」と「対話の促進」を明記したことの意義は大きい。

 北朝鮮に拉致された被害者の救出のためとはいえ、ここまで言及したことは凄い。この平穣宣言は世界にも影響を与え、六カ国協議の前進に結び付いた。その流れをぶっ壊したのは誰か。確かに金正日の跡を継いだ金正恩も悪いかも知れないが、米韓軍事大演習や「斬首作戦」で北朝鮮を挑発したアメリカはもっと悪い。それに追随している安倍首相はこの期に及んで9条加憲を狙う。ああ世も末だ。

 もう一度「日朝平穣宣言」に戻るが、金正日が「拉致」を認め「適切な措置」をとると約束したのは小泉首相が日本の植民地支配に対し「痛切な反省と心からのおわび」を表明したからだ。自らの非を認めるところから対話は始まる。今の米朝関係に欠けているのはその最初のボタンだ。

 北朝鮮に他国の領土に対する侵略的意図はない。要求しているのは停戦状態のままの朝鮮戦争の平和条約締結と対等な米との対話だ。今はそれを額面通りに受け止めることが大切なのだとおれは思う。