戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
今度の総選挙は「3極対決構図」(3日付『毎日』)だという。今朝のテレビを見ていたら、自公が与で希望・維新が野党、共産・立憲民主は第3極、と図を描いて説明していた。冗談じゃない。自公が与党なら野党と言えるのは共産、立憲民主、社民などではないか。右翼政治屋小池何某率いる希望の党とその一派は野党ところか第3極とも言えない。せいぜい1.5極だ。それだっておまけした点数だ。
この政界ごたごたの最中、象徴的な選挙が行われた。東京都武蔵野市長選である。自民党が推した高野恒一郎自民党元市議に共産党、民進党、生活者ネット、無所属市議らが支援した松下玲子さんが、34万対17万のダブルスコアで大勝した。この選挙、公明党・創価学会は自主投票だったという。
ついでに言えば、例の市職員不正採用で辞職した山梨市長選でも自民党候補が負けている。京都の長岡京市議選では共産党が1議席増の6人になり、自民党と同数になった。どんなに政局が混迷していても国民は誰に政治を託するのがいいのか、ちゃんと見ているのである。国民を侮ってはいけない。
安倍晋三首相が「国難突破解散」とやらをやる気になったのは「このまま事態が推移したら野党と市民の共闘がさらに強くなる、これを事前に潰さなければならない」と考えたからに違いない。「野党と市民の共闘」は彼にとってまさに「国難」なのだ。彼の頭の中には3年前の「オール沖縄」と去年の参院選が悪夢のように去来する。沖縄では自民候補が全滅し、参院選1人区て11議席も野党にもぎ取られた。
来るべき総選挙では沖縄や参院選1人区の失敗の轍は踏まない。それが安倍首相の執念だ。彼の政治信条からすれば小池百合子は同志であって決して敵ではない。希望の党が伸びたところでいずれ自民党に吸収できる。問題は野党と市民が本気で共闘して沖縄型の統一戦線を形成することだ。それだけは何としても防がねばならない。そのためにはまず民進党を抱き込んで野党共闘から離脱させる必要があった。
安倍首相のやみくもの解散権行使、小池都知事の新党結成、前原代表の民進党解体、ここまでは彼らが描いたシナリオ通りだった。枝野新党結成も彼らの想定内だったかも知れない。しかし、国の未来は最後は国民が決めるという国民主権の思想が彼らには欠落していた。表面だけ見ると日本の政治には絶望しかないように見えるが、混沌とした政治情勢を国民の立場で切り開く展望が出てきたと言えるのではないか。