戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
日馬富士の暴行事件、次から次へと新事実が出てくる。本人、被害者貴乃岩、現場に同席した白鴎、貴乃岩の師匠貴乃花親方、相撲協会、それぞれ違ったことを言う。とうとう警察まで出てきて刑事事件になりそうだ。メディアも連日取り上げているが、何で殴ったかとか横綱として資格があるかどうとかで、肝心の「何故日馬富士は貴乃岩を殴ったのか」という理由の解明に乏しい。おれにはそのことが気になる。
日馬富士は何故殴ったのか。メディア情報では①日馬富士が説教しているのに貴乃岩がスマホをいじっていた、②貴乃岩が日馬富士に対して「先輩と違って真面目に相撲を取っています」と言った、の2説ある。両方とも当て嵌まるのかも知れないが、おれには後者の方が暴行の主たる動機だと思える。
おれの推理を進める前に、今回の暴行事件の時と場所と同席メンバーについて触れなければならない。時は相撲協会が主催する巡業中で主催責任者は貴乃花親方だ。場所は鳥取県内の料理屋、メンバーはモンゴル出身の力士だ。今モンゴル出身の力士は幕内42人中9人を占める。占有率21.4%だ。
上位からいうと、日馬富士、白鳳、鶴竜、照ノ富士、玉響、逸ノ城、荒鷲、千代翔馬、貴乃岩。錚々たるメンバーだ。これらの力士なくして日本の大相撲は成り立たない。このメンバーが11月5日から始まる福岡場所を前に集まって酒を飲む。しかも相撲協会の公式行事である巡業中である。
いつもこういう酒席が設定されていたのだろうか。おれはモンゴルを国籍で差別するつもりはないが、モンゴルだけで集まるというのにはちょっと違和感がある。これは邪推かも知れないが、幕内9人のモンゴル勢が談合すれば大相撲の結果に影響を及ぼすことは容易に想像できる。早い話が特定の力士を優勝させるとか、十両転落を救ってやるとかが可能になるということだ。
そこで日馬富士の暴行理由に話を戻すが、貴乃岩の「先輩と違って真面目に相撲を取ってます」という発言をどう見るか、だ。モンゴル力士だけの酒席で、「談合」的な話が出てそれに貴乃岩が異論を唱えたとも推理できるのではないか。おれには説教中のスマホだけでそんなに激怒するとは考えられない。
これまでモンゴル「村」でうまくやってきた何らかの談合が壊れるかどうか、それが日馬富士の暴力に至った原因ではないか、ついで言えば白凰の奥歯に物の挟まったような証言のあいまいさなのではないか。これはおれのあくまでも勝手な想像であって、人に見解を押し付けるものでない。