戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

『毎日』夕刊の牧太郎さんコラムに思う 17/11/22

明日へのうたより転載

 毎週火曜日掲載の『毎日』夕刊2面のコラム「牧太郎の大きな声では言えないが」。辛口の社会批評が面白い。昨21日も楽しみに夕刊を開いたのだが、そう言っちゃなんだけどつまんない。「『いざなぎ超え』のうそ」のタイトルで銀行の経営不調とカードローンの胡散臭さを論じているのだが新鮮味がない。

 と不満を持ちつつ今朝、牧太郎さんのブログ「牧太郎の二代目・日本魁新聞社」を開いたら原因が分かった。一度書いて出した原稿が没になって新しいテーマで書きなおしたというのだ。当然没になった原稿というのが気にかかる。牧さんはそれをブログでも公開していないがどうやら「新聞の恥」に関するものらしい。

 牧ブログによれば事の経過は次のようだ。牧さんは「ある問題」をテーマにして原稿を20日未明にだしたが、夕方になってデスクから「これは載せられない」と拒まれた。「僕が大事にするのは『新聞の正義』だ。この問題で、今の新聞は『不正義』ではないか」と反論したが、「過激で掲載できない」と言われ意見が合わない。いくら正論を述べても駄目なので、とりあえず「違うネタ」にした。

 毎日新聞社は40年前に倒産危機に陥り、労働組合はじめ社員一丸で「再建」した。その時、①新聞の資本と権力からの独立、②国民に開かれた新聞、③編集の民主的運営を保証する編集綱領の成立、を労使で確認した。その後いろいろあったが、この基本理念は受け継がれているはずだ。

 編集綱領から今回の問題に関すると思われる条項を抜き書きする。
 「言論の自由独立と真実の報道を貫くことをもって編集の基本方針とし、積極果敢な編集活動を行う」
 「毎日新聞の記者は、編集方針にのっとって取材、執筆、紙面製作にあたり、何人からも、編集方針に反することを強制されない」

 牧さんの原稿が社の編集方針を逸脱したものだったのだろうか。「過激だから」という理由では納得できないのは当然である。牧さんは「新聞記者として『今』書かねばならぬことがある。たとえ新聞の『恥』であっても、書かねばならないことがある」と信念を披歴する。そして「新聞は何時から『権力のポチ』になったの?」と嘆き、「このテーマは何時かは書くからな!」と宣言する。

 おれは牧さんを支持する。「過激だから」と掲載を拒んだ毎日新聞は読者に背を向け、編集綱領をないがしろにするあるまじき行為だと思う。毎日労組にこの問題を編集綱領違反として取り上げるよう要請する。