戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
26日の参院本会議で日本共産党の小池晃議員が代表質問を行った。「安倍政権の暴走 転換迫る」質問内容だった(27日付『赤旗』)が、安倍晋三首相の答弁は小池氏の言によれば「まったく質問に答えようとしない態度が鮮明になった」だけ。どうせ事務方任せでつくった答弁だろうが、『赤旗』に載った「働き方改革」関連の答弁要旨を読んでみた。そこにあるのはコケにされた労働組合の姿だった。
まず「高度プロフェッショナル制度」。小池氏が「(残業代ゼロ法案であり)まさに財界の要求そのもの」と追及したのに対して「昨年3月28日、私自身が議長となり、労働界と産業界のトップと有識者に集まりをいただいた働き方改革実現会議において、働き方改革実行計画を決定した。この実行計画に基づいて行う改革であり、財界の要求そのものという指摘は当たらない」と答えている。
また、「月100時間の残業規制は過労死ラインを超えている」との指摘については「時間外労働の上限は、月45時間、かつ年300時間と法律に明記する。そのうえで労使が合意した場合でも上回ることができない上限を、年720時間とし、その範囲内において複数月の平均では80時間以内、単月では100時間未満と定めている」「『過労死の合法化』という批判はまったくあたらない」と言い切る。
そのほかで気になったのは、「無期転換ルール」について「改正労働契約法に見直し規定が設けられており、施行状況を監視しつつ対応している」と述べている点だ。つまり無期転換ルールの適用で紛争があるなら法律そのものを見直すというわけ。これは酷い。非正規労働者の雇用安定にとって大変な逆行である。
それにしても「高プロ(残業代ゼロ)法案」は「労働代表」も容認しているとか、時間外規制は月45時間だが労使で合意するなら100時間まで働かせていいよ、つまり労働側の自己責任だよという言い方には今さらながら頭にくる。最もそう言わせる原因は連合の側にあると認めざるを得ないけどね。
挙句の果てに「時間外労働を適正化するための指針を定め、国が使用者および労働組合等に対し、必要な助言、指導を行えるようにすることを予定している」と「労働組合に対する指導」まで持ち出された。哀れ労働組合は時間外労働のあり方について安倍晋三に「指導」されるところまで落ちぶれてしまった。
ここまでコケにされて連合は黙っているのか。「官製春闘」に甘んじるのか。さあどうする。