戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
あまりと言えばあまりの朝日新聞攻撃。新聞の雑誌広告(26日付『毎日』)を見て異常を感じた。「やはり逃げたか、朝日論説主幹 櫻井よしこ/川村二郎(元週間朝日編集長)」「朝日新聞の歪んだ安全保障観 古森義久」=『WILL』4月号。古森氏はベトナム解放時の毎日新聞特派員だった。
「総力大特集 赤っ恥朝日新聞!」「『言論の衿持』はいずこへ 櫻井よしこ」「哀れ朝日新聞の自殺 小川栄太郎(日本平和学研究所理事長)」「『誤報して逆上』は昔っから 高山正之」「ついに一線を越えた社説 有本香」「安倍総理が呆れた『惨めな』言い訳 和田正宗(自民党参院議員)」=花田紀凱責任編集『HANADA』4月春信号。値段は2誌とも840円だ。
そう言えば安倍晋三首相も国会で、朝日新聞攻撃を繰り返している。右翼系や権力筋からの総攻撃に晒されている格好だ。まるで世の中の悪は朝日新聞が根源と言わんばかり。かつては「沖縄2紙を潰せ」と言われたが今度は「朝日を潰せ」というわけだ。第二の阪神支局事件など起こらなければいいが。
ところで話は違うが、例の「働き方改革」関連法案の目玉の一つ「裁量労働制の拡大」が今国会にはかけられないことになりそうだ。「働き方法案 裁量労働削除を検討」「政府 異常データ受け」「首相迷走戦略狂う」「総裁3選へ大幅譲歩」(1日付『毎日』)。それはそれで結構な話なのだが、問題を「首相のミス」程度のレベルで終わらせるわけにはいかない。問題の本質はもっと深いところにある。
そもそもこの法案は財界の要望を受けてつくられたもの。だから「裁量労働制 削除検討」には「経済界の反発必至」(1日付『毎日』)ということになる。「裁量労働制は1987年の労働基準法改正で導入された後、経済界の要望に応じて範囲が拡大されてきた歴史がある」(『毎日』)。
財界は労働者の労働を「時間管理」から「成果管理」に移す魂胆だ。時間管理なら労働組合の出番があるが、成果管理だと使用者の裁量に委ねることになってしまう。労働時間を勝手に長くすることは規制があるが、成果の基準をどこに置くかは使用者の意のままだ。労働者は成果を上げるために無制限に働かなければならない。
こんな無理な法案がすんなり通るわけがない。今回の「法案削除」は首相のでたらめな論法が自ら墓穴を掘ったと言える。闇雲な朝日新聞攻撃は実はかれらの焦りの象徴だとおれは思うのだが。