戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
駅前の通りを歩くとアジア系外国人とよく行き違う。けやき通りの床屋さんは「常盤平団地にもたくさんの外国人がいてうちにもくる。洗髪しなくていいから1000円にしてくれと言われて困る」と嘆く。居酒屋チェーンの従業員の半分は外国人のように思う。いったいこれからどうなるのか。
4月11日付『日経デジタル』は「外国人、技能実習後も5年就労可に、本格拡大にカジ」のタイトルで日本における外国人就労について報じている。「政府は2019年4月にも外国人労働者向けに新たな在留資格をつくる。最長5年間の技能実習を修了した外国人に、さらに最長で5年間、就労できる資格を与える。試験に合格すれば、家族を招いたり、より長く国内で働いたりできる資格に移行できる。5年間が過ぎれば帰国してしまう人材を就労資格で残し、人手不足に対処する。外国人労働の本格拡大にカジを切る」。
さらにネットニュース『ダイヤモンドオンライン』(3月13日付)は「日本は外国人労働者にどれだけ支えられているか?知られざる現実と課題」と題して実態を抉る。「日常生活を送るなかで、飲食店で外国人労働者に接客を受ける機会やレジスタッフがほとんど外国人店員であるコンビニエンスストアを見かける機会が増えたと感じないだろうか。特に都市部では、こうした変化を日々実感している人は少なくないはずだ」。
日本で働く外国人労働者は2017年10月現在で127万8000人、雇用する事業所は19万4000にのぼる。全産業において外国人依存度は高まっており、宿泊業、飲食サービス業では25人に1人が外国人だ。昨年技能実習制度に介護職が追加されたことにより、今後、医療・介護分野における依存度が高まることが想定される。依存度の高い業種の特徴として①入職率、離職率が高い、②人手不足、③低賃金、④労災率が高い、などがあげられる。日本人がやりたくない仕事を押し付けている格好だ。
政府はそもそも単純労働者の受け入れは原則としては認めていない。しかし抜け穴がある。技術実習生制度だ。これをどんどん拡大して事実上単純労働者を受け入れてきたのが実態なのだ。しかし技術実習生の延長としての受け入れでは、外国人労働者の労働条件、働く権利は著しく制限され、劣悪なまま放置される。このような無権利の外国人労働者の存在によって日本人の日常が支えられるとしたら・・・。
ではどうしたらいいか。おれはまず欺瞞的な技能実習制度を即刻廃止すべきだと思う。外国人労働者を労働者としてきちんと位置付ける。労働基準法、最低賃金法、労働組合法など労働法規をすべて平等に適用する。外国人でも長く日本にいれば家族も持つし、子どももできる。外国人労働者の人生に責任を持った国の政策が確立されなければならない。それが出来なければ受け入れるべきでない。一番悪いのは、劣悪な現状に目をつぶり、日本側の都合でなし崩し的に受け入れを拡大することだ。