戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
昨日、今日と晴天で最高気温が30度を超す。6月なのにもう梅雨が明けたかのようだ。梅雨前線が東北地方まで押し上がっており、青森、岩手は大雨だという。もっとも梅雨前線そのものは消滅したわけではないので、また下がってくれば雨が戻る可能性が高い。梅雨の晴れ間と見た方が無難だ。
昼飯にカレーライスを食べた。カレーはスーパーで買ってきた4袋300円の業務用レトルト食品。これが超辛口で結構うまい。福神漬けと一緒に一息に食い終わり、満足して昼寝した。マットレスを敷き、風通し良くして1時間。すっきりして目が覚めた。バリ島以来、昼寝が習慣になってしまった。
パソコンを起動させて、この前から少しづつ見ている映画「月光の夏」を見終えた。話は特攻隊が題材の「戦争の悲劇」ものだが、人の心の奥に誰でも持っている「疑わしさ」のようなものを突き詰めて考えさせられる。元音楽教師役の渡辺美佐子が小学生の前で、敗戦間際に特攻隊員がピアノを弾く話をする。ところが証人が出ないため「作り話」ではないかと疑われる。自宅へ詰問の電話までかかってくる。
山本圭扮するジャーナリストがピアノを弾いた元特攻隊員(仲代達矢)を探し出す。最初証言を拒んでいたが、音楽教師の手紙の訴えに打たれて真実を話す決意をする。45年6月、6機編隊で沖縄沖のアメリカ艦船体当たりに向かう。途中飛行機のエンジン故障で自分だけ引き返す。これを上官から「命が惜しくなって引き返したのだろう」と責められる。同じように天候不良や乗機のトラブルで引き返した隊員と一緒に一室に閉じ込められる。「生き神様の特攻隊員の面汚し」というわけだ。死ぬよりつらい日々を送らせらされる。
当時特攻隊員の指名を受けたら断るのは事実上できなかった。しかしやはり死ぬのは怖い、生きていたい」と思った時、天候不良でも機体トラブルでもいいから引き返したいと思うのは人情だ。すくなくともおれならそう思う。幸いエンジンの調子が悪い。僚機の乗組員も引き返せと合図する。おれなら「しめた」と安どして引き返す。心の中の動きだから後で何とでも言い訳できる。
この映画では人間の心に潜む「疑わしさ」に深い究明のメスを入れることなく、特攻美談で終わらせている。だから泣ける。おれも泣いた。映画としてはそれでよかったのだろうが、現実のところはそんな簡単な心の動きでなかったような気がする。これは世の中全体に言えることだと思うが。