戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
「栃木女児殺害2審も無期」「『録画で認定1審違法』東京高裁」(4日付『毎日』1面)「無期判決弁護団『不当』」「手紙の評価疑問視」(同第2社会面)。05年12月に発生した事件。捜査が難航し、懸賞金つきで情報提供を呼びかける。9年後の14年6月に「犯人」逮捕。取り調べでは犯行を自白したが、裁判では無罪を主張。宇都宮地裁の一審で無期懲役。今回東京高裁でも判決は踏襲された。
足利事件で再審無罪になった菅谷利和さん、布川事件の桜井昌司さんも「この事件は冤罪なんですよ。なんでこんなことが繰り返されるのか」と怒っている。おれも冤罪だと思う。状況証拠だけで無期懲役なんて酷すぎる。それはそれとしておれがこのブログで書きたいのは、関連はするが別の話だ。
この判決を報じた『毎日』記事に「判決後、記者会見する」弁護団の写真が載っている。なんか見覚えのある顔だ。主任弁護人の一木明弁護士。そうだあの一木先生ではないか。1983年だからもう35年前になる。栃木県の地方紙『下野新聞』争議で最初から最後までお世話になった。
下野新聞は毎日新聞の系列、経営者が毎日から派遣される。中には点数稼ぎにあくどいことをする奴がいて、賃金をけちるために組合を弾圧した。協約破棄に端を発し、団交拒否、組合幹部配転と攻撃を強めてとうとう労働争議になった。当時おれは新聞労連法対部長で争議指導の責任者だった。
組合は一連の攻撃を不当労働行為だとして栃木県労働委員会に申し立てた。その組合側代理人を引き受けてくれたのが一木明弁護士。当時まだ独身で真面目一辺倒、ち密な法廷戦術を立てて組合側にいい加減な対応を許さない。一方酒は嫌いな方ではなく、対策会議が終わると宇都宮の繁華街によく飲みに出かけた。打ち合わせのため上京すると新聞労連書記局のある水道橋界隈でも一緒に飲んだ。
下野新聞争議は2年間たたかって、配転撤回、協約復活、会社陳謝などを盛り込んだ労働委員会の和解が成立し完全勝利した。毎日本体から送り込まれた労務屋は更迭され、組合幹部は全員元の職場に戻った。市内のホテルで開かれた闘争勝利パーティで一木先生は最高の笑顔を見せていた。
あれから35年、新聞で見る一木弁護士は髪に白いものが目立ち、顔だちも年相応に変わっている。しかし眼鏡の奥の鋭いまなざし、正義を主張する厳しい表情は昔と変わらない。最高裁での逆転を陰ながら応援したい。