戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

おれたちの年金積立金をドブに捨てるな 18/08/14

明日へのうたより転載

 「トルコ通貨急落連鎖」「アジア株安 東証440円下げ」(14日付『毎日』)。「週明け13日の金融市場は、先週末のトルコリラ急落に端を発した混乱が続き、日本を含む世界の株価が下落した。日経平均株価は、前営業日比440円65銭安の2万1857円43銭で取引を終え、約1か月ぶりに2万2000円を下回った」。トルコリラ急落の仕掛人はトランプ大統領。日本の株式のもろさがもろに出た。

 安倍首相と黒田日銀総裁がタッグを組むアベノミクスは、総崩れの様相なのに株価だけが下落しない。内閣支持率の下落を必死で支えている。株価つり上げの財源は何なのか。それを暴露したのが8日付の『赤旗』だ。「公的マネー投入」「株価つり上げに66兆5000億円」「アベノミクス 異常事態」。

 「株式を買い入れている公的資金は、日銀と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です」。日銀の資金投入額が6月末で26兆1000億円、GPIFは40兆4000億円、合わせると66兆5000億円になるというわけだ。これは東証1部の時価総額644兆円の10.3%に当たる。

 今度のトルコリラ急落に絡む日本株式の下落にあたっても、当然公的マネーによる買い支え資金投入が行われるだろう。それ自体も問題だが、こうやって際限なく投入される資金は結局はヘッジファンドに吸い取られてしまう。まるでドブに金を捨てているようなものだ。しかもそのお金はおれたちが汗水たらして積み立てた年金積立金だというから心底怒り心頭なのだ。まさに「異常事態」と言わねばならない。

 そもそも年金積立金は国民の貴重な財産なので、その運用は堅実の上にも堅実に扱われてきた。それがこの数年、株式投資の枠がどんどん広げられ、今やGPIFを抜きにしては株価を語れなくなった。もし今日銀やGPIFが証券市場から手を引いたらどんなことになるか。想像もつかない事態が待っている。

 『赤旗』報道によれば、公的マネーが筆頭株主になっている東証1部企業はこの3か月で12社増え722社にのぼるという。こうなっては日銀やDPIFはもう企業社会にどっぷ嵌って抜き差しできない。株式投資で資産が増えたと言っているようだが、金に換えられない証券は紙屑同然でしかない。

 このままいくと日本資本主義と心中だ。アベノミクスのご本尊に辞めてもらって、カジノまがいの経済政策を大転換させなければならない。おれは死んでも死にきれない。