戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
「北海道 節電本格化」「北海道地震 生産復旧電力不安が壁」「苫東厚真火力 直後に2基自動停止」「全道停電引き金に」(11日付『毎日』)。「北海道節電長引く恐れ」「『苫東』全面復旧は11月に」(12日付同)。「北海道地震1週間 全面停電一極化のツケ」「企業節電四苦八苦」「看板点灯遅らす/自家発フル稼働」(13日付同)。北海道地震の電力不足関係の記事である。
そもそも震度7程度の地震で、何故発電所が停止したのかよく分からない。11日付『毎日』によれば「北海道電力(北電)は10日、北海道全域を襲った停電の原因となった苫東厚真火力発電所(北海道厚真町)で、実地調査を始めたと発表した。同発電所にある発電設備3基のうち、2号機と4号機が震度7の揺れを感知して地震直後に自動停止し、道内にある他の発電所3か所に負荷がかかって『ブラックアウト』につながったことが判明した」というのだが、要するに地震によってどこか故障したというのでなく、「自動停止」しただけのようだ。それならすぐ復旧できそうなものだが11月まで駄目だという。
この日本列島で、震度7程度の地震はどこで起こっても不思議ではない。それを想定していない発電所というのはどういう危機管理をしていたのか。そんな疑問を持っていたら、12日付『毎日』の「記者の目」欄で筑井直樹記者が「原発依存が招いた〝人災〟」と指摘しているのが目に入った。「地震は予測不能の天災だが、停電は電気を供給する北海道電力(北電)に責任があり想定外ではなかった。今回の原因は、長年にわたる原発依存の経営が招いた〝人災〟だと言わざるを得ない」。
北電は1998年に泊原発1号機が運転を開始して以来、原発依存度が4割と全国で一番高かった。2009年には3号機が動き出したが、直後に福島第一原発事故が起こって12年に停止しそれ以後稼働していない。にもかかわらず北電は泊原発の再稼働に固執し、火力、水力、再生エネルギー型等への資金投下を怠り老朽化を放っといたというのである。そのツケが回ったのが今回の電力不足・停電騒ぎなのだ。
いま政府はテレビで20%節電を要請するなど、北海道の停電で大騒ぎしている。「電力が足りなくなるのは原発停止のせいだ。泊原発を早く稼働させよう」との魂胆が見え見えである。筑井記者はそれを見抜いて次のように提言している。「このまま冬を乗り越えるのはかなり厳しいだろう。だからといって泊原発の例外的な再稼働はあってはならない。(中略)北電は電源の多様化や発電所立地の分散化に、限りある経営資源を投じるべきだ」。まったくその通りだ。筑井記者がんばれ。