戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

「リーマンショック10年」に思う 18/09/15

明日へのうたより転載

 リーマンショックから10年になる。本15日付『毎日』は「負債64兆円世界震撼」「『最悪シナリオ』現実に」というタイトルで特集記事を組んでいる。リーマンショックの起こった2008年は本ブログの開設の年でもあった。おれは懸命に世界金融危機と日本の労働運動について綴った。

 フランスで「カジノ資本主義」を批判する10万人以上のデモ。世界中で労働者が立ち上がっているのに日本の労働組合は静か過ぎるのではないか(2008年10月1日付)。
 「トヨタでは期間労働者が世界不況を理由に情け容赦なく首を切られている」「(労働者の入っていた)寮の玄関には、仲間の布団が山積みになっている」「寮はゴーストタウンだ」。(10月24日付)

 「トヨタ3000人、ホンダ270人、日産1500人、スズキ600人、三菱自1100人、いすゞ1400人の非正規労働者が切り捨てられようとしている。労働組合は知らん顔だ」(12月1日付)。
 『赤旗』はトップ、一般紙でもかなりのスペースで「いすゞ非正規社員の労組結成」を報じた。NHKニュースでも。たった4人の組合結成がこれだけの関心を持たれたのは凄いことだ。(12月7日付)。
 「キャノンの非正規労働者でつくるキャノン非正規労働組合が22日、都労委に不当労働行為救済申立てをした」。請求内容は①6人の組合員を正社員と認める、②不誠実団交の是正。(12月23日付)

 『いすゞ、中途解雇撤回 期間社員550人 世論と運動で前進』(『赤旗』)『いすゞ途中解雇撤回 期間工の550人 契約延長はなし』(『毎日』)。今後に残された課題も大きいが、苦しいたたかいに立ち上がった労働者に確信を与える大きな前進だ。JMIUいすゞ支部の松本浩利委員長も「人員削減の姿勢は変わっていない。期間工の正社員化、派遣社員の解雇撤回などを求めて引き続きたたかう」と決意を述べている。4人で発足した同組合が25人に増えているのが頼もしい。(12月26日付)

 「今年労働組合そのものがみんなの関心事になった。いすず自動車やキャノンで新しい組合ができるとマスコミが押しかけた。派遣や期間工を組織した小さな組合の委員長がとつとつと会社への恨みを語る顔がテレビの画面に大写しになった。労働組合は労働者が生きるための『砦』であるという当たり前の真実が国民共通のものになったのだ」。激動の1年をおれは希望をもって締めくくった。(12月30日付)

 あれから10年、日本の労働運動はいすゞ支部の松本委員長の期待に応えたのだろうか。