戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
「スルガ銀 一部業務停止へ」「不正融資 金融庁週内にも命令」(4日付『赤旗』)。「同行の不正融資は、破産したスマートディズ(東京)が手掛けていたシェアハウス投資をめぐるトラブルがきっかけで発覚、シェアハウスの入居率が低迷し、同社は投資家への賃料の支払いを停止。ほとんどの投資家が、スルガ銀からの借り入れで物件を購入していたため、返済に窮しています」。
おれはこの記事を読んで10年前のリーマンショック、その原因になったサブプライムローンを思い出した。あれも根本は貧困層を食い物にした金融資本の悪だくみだった。簡単に振り返ってみよう。
アメリカの銀行が融資する基準として有料客(プライム層)とそれ以下のサブプライム層がある。サブプライム層とは、例えばローンが払えなくて一度破産した人とか、年収の半分以上の借金がある人のこと。その人たちにローンを組んで住宅を建てるのだから当然不良債権化する。それを分かっていてサブプライムローンを組み入れた金融証券を、アメリカの証券会社が世界中で売り出した。
この危ない証券を保有していたリーマン・ブラザースや多国籍企業の保険会社AIGなどが潰れたり国の経営管轄下に置かれたりした。世界金融危機である。日本でもその影響で輸出産業を中心に業績が悪化し、いわゆる派遣切りが横行した。日比谷公園では年越し派遣村が設置されメディアで話題になった。
スルガ銀行がシェアハウス投資のために金を貸したのも、本来は多額の融資は無理な人たちである。「第三者委員会の報告書によると融資審査書類の改ざんや契約書の偽造が投資用不動産関連融資で蔓延。一部役員を含む行員も関与していました」(『赤旗』)。返済困難になるのは目に見えていた。
そもそもシェアハウスは一人では部屋を借りられない貧困層のための住宅である。今そういった貧困層が年寄りだけではなく若者にも増えている。そこへ目をつけたのがスマートディズなる不動産屋で、それと結託して垂れ流しの融資をしたのがスルガ銀行なのだ。しかし貧困の若者はシェアハウスにも入れない。不動産屋の甘い言葉のようなシェアハウス経営ができるわけがない。投資者に残ったのは借金だけだ。
『赤旗』は今回のスルガ銀行の不祥事を「経営陣が営業現場での書類改ざんなどの不正を把握せず、ガバナンス(企業統治)が機能不全に陥っていた」と指摘するが、おれはもっと深いところに原因の根っこがあるような気がしている。