戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
「週間金曜日」11月2、9日号に掲載された対談「『ネトウヨ』バブルはもう底を打った」が面白い。対談者はそれぞれ1982年生まれの倉橋耕平立命館大学非常勤講師と評論家の古谷経衡。「1980年代生まれの論者が語り合う『フェイクニュースの時代』」。古谷氏は元ネトウヨだったという。
今の日本でネトウヨ(ネット右翼)と呼ばれる人がどのくらいいて、どんな職業、学歴、年代層か。「古谷さんも独自調査されたそうですが、研究者による調査でも『ネトウヨ』と呼ばれる年代は40代、学歴は大卒が多い。職業別では自営業が多く、さらにIT系や保安業にも多いという特徴があります」「数的には、200万人くらい。実際には、それほど多くない」(倉橋)。
「人口の2%ぐらいでしょう。僕の経験から言うと、60代、70代の世代がコロッと『ネトウヨ』になる」「(ネトウヨ層の特徴は)首都圏のミドルアッパー以上の、自営業者が大半ですね。それに医者とか」(古谷)。ネトウヨは関東に多くて関西は少ない。彼らは「在日朝鮮人に日本人にはない特権が与えられている」と叫ぶが、在日が多い大阪などでは「そんなものあらへんやろ」と皮膚感覚で分かる。
対談を読んでいて「なるほど」と思ったのは、アベ政治への影響力として注視されている「日本会議」に対する2人の見方だ。「一部には『日本会議』について『日本を操る黒幕』とか、『ものすごい力を持っている』みたいなことを言う人がいるけど、陰謀論のように極度に過大評価するのは良くないと思います。どの閣僚が『日本会議国会議員懇談会』に属しているかと騒ぐ人もいるけど、全員が全員、『日本会議』のイデオロギーを背負っているようにはとても見えません」(倉橋)。「僕も同じ考えです。50票でも100票でも入れてくれれば、国会議員はどんな議連や団体にも入りますからね」(古谷)。
ネトウヨも生まれた頃はそれなりの思想的バックボーンみたいなものがあった。小林よしのりの「戦争論」や桜井よしこ、渡辺昇一、西尾幹二などの本を読んでいたが今は読まない。ネットに走り書きされた100字くらいの文章を読むのが精いっぱい。彼らのなかで今ももてもてなのは桜井よしこの動画だ。
杉田水脈や片山さつきは初期ネトウヨの典型だが、今はもう通用しなくなっている。「安倍政権が終わったら安倍翼賛のオールド右翼の論調も変わっていくはず。それにつれて『ネトウヨ』の趨勢も、『逆雪だるま式』に収縮していくと予想しています」(古谷)。