戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

仏「黄色いベスト運動」に50年前を想起する 18/12/16

明日へのうたより転載

 「仏で5週連続デモ」「大統領『譲歩』後初 収束は不透明」(16日付『毎日』)。マクロン政権による生活破壊に抗議する民衆のデモが続いている。このデモに対して労働組合のCGTや既存の左翼政党はどんな関りをしているのか、それとも関わっていないのか。おれはずっと注目してきたがなかなか見えてこない。

 その辺の事情が16日付『赤旗』でやっと見えてきた。「パリ 労組呼びかけデモ」「労働者、高校生ら参加」「ストライキも並行実施」。CGTの呼びかけで1万5000人がパリ市内をデモ行進したという。「14日付仏紙『ルモンド』(電子版)によると、デモにはCGTのほか労働者の力派(FO)、統一組合連合(FSU)の活動家や労働者、マクロン政権の『教育改革』に反対する高校生らが参加しました」。

 この記事によると今フランス全土で運動が広がっている「黄色いベスト(GJ)」運動に呼応したものではあるが合流したり統一したりするものではない。ルモンド紙か指摘するように「労組の活動家の多くは当初、自発的で雑多な運動だとむしろ警戒していた」のが実情だったらしい。

 一方で「すばらしい。人々が立ち上がって自分たちの怒りを表明することができた」と評価するCGT活動家もいて、それが今回のデモの呼びかけになったらしい。そこで思い出されるのが50年前の1968年5月、学生たちがカルチェラタンにバリケードを布いたのを端緒にする「熱い春」運動である。

 学生たちの運動が労働組合に広がり、航空機、ルノーの製造労働者、国有企業、公共機関、民間の全部門でゼネストに入る。スト参加者は700万とも800万とも言われた。これに驚いたドゴール大統領は、大学改革や労働者の企業運営への参加を提案したが、デモは収まらない。

 労働組合は①10%の賃上げ、②35%の最低賃金底上げ、③労働時間を3年以内に40時間に短縮するなどの内容の「グルネル協定」を勝ち取ったがたたかいはさらに継続された。ドゴール大統領は5月30日、国民議会の解散を宣言する。完全敗北である。これをもってゼネストは収束された。

 さて今回のGJ運動、それと並行する労働組合のたたかいだが、マクロン政権は最低賃金引き上げ、ボーナスや残業代への非課税などの譲歩案を次々に出しているが、どこで収まるのか。政権崩壊の惧れすらあるのではないだろうか。「熱い春」ならぬ50年後の「熱い冬」である。