戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

ゴーン逮捕の裏に「藪」があるのではないか 19/01/29

明日へのうたより転載

 『赤旗』が「資本主義の病巣」「日本をカットした日産」のタイトルでゴーン体制下の日産経営について問題点を抉り出している。1月25日付は第8回。「『空洞化の号砲』鳴らす」「最大拠点は中国」「部品も海外生産」。日産が利益第一主義で日本経済の屋台骨を海外流失させているという。

 「2010年、日産の小型車マーチの生産が国内から消えました。タイに拠点を移したためです」「日産の国内生産台数は1983年度に247万台でした。それが2017年度には99万台にまで落ち込みました。6割もの激減です」。この間、国内従業員を2割も減らしているというのだ。

 ゴーン流の海外への生産流出は最初がアメリカで、「生産の主力だった村山工場を閉鎖する一方、米国で新工場の建設を進めたのです」。その後海外への拠点として急伸しているのが中国。「中国での日産の生産台数は17年に118万台。日本を抜いて日産最大の生産拠点に躍り出ています」。

 今や日産経営は中国抜きには考えられなくなっている。「研究開発拠点も中国に移しつつあります。提携する中国企業に電気自動車(EV)の技術を移転。合弁会社を設立して共同開発を行っています」。EVと言えば、これからの自動車産業の中核をなす部門だ。それを中国との共同事業にする考えだ。

 『赤旗』記事はここまでで、これ以後はおれの推測・推論になる。こんなに中国と一体になってきた日産、中国側にしても今後の自動車産業の発展は国の経済運営の柱にもなる話だ。当然力を入れる。そこで問題になるのが米中経済戦争だ。アメリカにとって日産と中国の蜜月関係はすこぶる剣呑な話になる。日産ゴーンの肩入れで中国の経済力が強くなることはトランプにしては我慢がならない。

 去年の秋に日米経済会談が行われている。そこでこの日産ゴーンによる中国経済へのテコ入れが問題になった可能性はなくはないだろう。「お前の責任でなんとかしろ」とトランプに言われたわが安倍首相が「へい分かりました」と丸呑みする。その一か月後のゴーン逮捕と全く無関係なのだろうか。

 ゴーンの拘留は国際的批判を浴びながらも長期にわたっている。「派遣切り」「村山工場閉鎖」「日本カット」の張本人、ゴーンなにがしに同情する義理はないが、経営の神様から極悪犯罪人に落とした裏には表面だけでは分からない「藪」があるのではないか。おれの妄想ならいいのだが。