戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
もうすぐ3月1日。日本の植民地支配からの独立を叫んで朝鮮の民衆が立ち上がった「3・1バンザイデモ」から100年が経つ。あれは10年くらい前だったかな、ソウルのタブコル公園に行ったことがある。公園を取り囲んで、民衆デモと日本軍の弾圧を描いた10枚の銅板レリーフが建っていた。おれはその一枚一枚を写真に撮りながら、重い気持ちを味わった記憶がある。
2月22日号の『週間金曜日』が「100年前のろうそくデモ」と題して3・1朝鮮独立運動を特集している。「わたしたちは、わたしたちの国である朝鮮国が独立国であること、また朝鮮人が自由な民であることを宣言する」(民衆によって掲げられた「3・1独立宣言」の冒頭文)。この独立宣言と正面から真摯に向かい合った日本人がいた。『週間金曜日』によれば次のような人たちである。
石橋湛山(当時『東洋経済新報』記者)「およそいかなる民族といえど、他民族の属国なることを愉快とするごとき事実は古来ほとんどない」「朝鮮人も一民族である。彼らは彼らの特殊なる言語をもっている。多年彼らの独立の歴史をもっている。衷心から日本人の属国たるを喜ぶ鮮人は一人もなかろう」「故に鮮人は日本の統治の下にいかなる善政に浴しても、決して満足すべきはずはない」。
布施辰治(戦前から思想弾圧とたたかってきた弁護士)「崩壊断末魔に苦しむ日本資本主義の極みを植民地政策の支持に求めた朝鮮の経済的搾取と政治的圧迫とは容易に散り去ろうとはしない。いよいよ暴慢の限りを尽くす総督政治の不合理と不徹底とはいわゆる朝鮮問題の紛糾を続出している」。
柳宗悦(人々の暮らし大切にする民芸家)「私は朝鮮の芸術ほど、愛の訪れを待つ芸術はないと思う。それは人情に憧れ、愛に活きたい心の芸術であった」「(彼らは言う)われわれの文化を馬蹄に蹂躙して、厚い友情を裏切ろうとするのであるか。かかる事が日本の名誉であると誰が言い得るのであるか」。
吉野作造(無産政党の指導者)「あれだけの暴動(3・1独立運動)があってもなお少しも覚醒の色を示さないのは、いかにも良心の麻痺の深甚なるかを想像すべきである」「およそ自己に対しての反対の運動の起こった時、これを根本的に解決するの第一は自己の反省でなければならない」。
『週間金曜日』は「戦前の良心から私たちは何を学ぶか」と問いかけている。先人たちの、時代の風潮に流されない勇気ある発言をかみしめながら、2019年3月1日を迎えたいと思う。。